合意形成論

担当教官(所属、所在)
土屋俊幸(地域マネジメント学講座、2号館4F410号室)

対象学生 科目の種別 開講学期 単位数
農林環境科学科
 地域マネジメント学講座2年次
講座科目
選択
後期2単位
農林環境科学科
 森林科学講座年次指定無し
講座外科目
選択

授業の目標
 最近、国の政策から身近な市町村の具体的な施策まで、様々なレベルで、住民、市民、国民の意見を採り入れ、政策の決定に反映させていこうとする試みが行われるようになってきた。これは、これまで、行政の意志決定が閉鎖的に行われてきた結果、自然環境の破壊や国民の権利の侵害、健康の阻害など多くの深刻な問題が起きてきたことに対する反省に基づくものだと考えることができる。また、都市や農山村において、住民が主体となって、まちづくり、集落づくり、公園づくり等に取り組み、計画策定や管理方針を決めていこうという気運も高まってきた。
 しかしここで厄介なのは、たくさんの人間が意思決定や計画策定に参加すればするほど、一つの案を作成したり、一つの事柄を決定するのが困難になることである。何かマニュアルのようなものが存在すれば楽なのだが、現実はさまざまな事情が複雑に入り組んでいて、それほどことは単純ではない。「合意形成論」が生まれる由縁である。この授業では、こうした問題にどのように取り組んで行くべきかをいろいろな角度からなるべく具体的な例を材料に考えていきたい。

概要と計画
[授業の概要]
 授業は、内容から大きく3つに分かれる。一つは、「いまなぜ「参加」なのか?」である。それこそ、近所の児童公園づくりから、「美しいむらづくり」、「流域管理システム」、果ては海外での協力プロジェクトまで、この5〜10年の間にさまざまな領域で「参加」が定着してしまった。しかし、そもそもなぜ「参加」なのだろうか。「参加」を真にわれわれのものとするためには、この問いについて、理論的に、また歴史的経緯を踏まえてしっかり考えておく必要がある。ディベート演習も含めて議論する。
 二つ目は、「合意形成の理論」である。経済学や社会学では合意形成に関係した理論(紛争の理論も含む)がいくつかあり、また事例分析から導き出された経験則的な理論もある。これらについて簡単に説明する。
 三つ目の「市民参加・住民参加の実際」では、国内外、森林・河川・農村・都市などにおける多様な参加、合意形成の実際とその課題について紹介する。

[授業計画]
○いまなぜ「参加」なのか?              ○市民参加・住民参加の実際              
1.参加とは何か                   11.環境アセスメント                    
2.歴史的経緯                    12.流域保全                    
3.国内外の現状                   13.都市・農村計画                    
4.参加の理論/日本における今後の方向        14.流域管理システム(林業・林産業活性化)        
5.ディベート演習                  15.レポートの評価会                  

○合意形成の理論
6.合意形成とは何か
7.決め方の論理(1)
8.決め方の論理(2)
9.紛争の論理
10.ワークショップ演習

教室外の学習
 できるだけ、世の中で起こっていることに興味を持ち、新聞などを読んでいて欲しい。合意形成論の素材は、実はそこら中に転がっているのだ。

教科書、参考書
参考書:佐伯 胖『「きめ方」の論理ー社会的決定理論への招待』東京大学出版会、木平勇吉編『森林環境保全マニュアル』朝倉書店など。

授業の形式
・講義+演習(ディベート、ワークショップ等)。
・「地域マネジメント学基礎I」と交互に行う隔週講義になる。従って、講義は5・6校時、7・8校時の連続2コマとなる。
・授業中に積極的に質問をし、意見を述べることを求める。上記のように長時間の講義になるので、なるべく議論をしたい。

成績評価の方式
毎回の授業での質問・意見の評価(20%)+ディベート・ワークショップでの議論の評価(30%)+レポートとその評価会での議論(50%)

履修に当たっての留意点
関連科目として、「地域計画学」、「NPO論」、「環境保護思想史」の履修が望ましい。