合意形成論

担当教官(所属、所在)
土屋俊幸(非常勤講師、農林環境科学科)

対象学生 科目の種別 開講学期 単位数
農林環境科学科
 地域マネジメント学講座3年次
講座科目
選択
後期2単位
農林環境科学科
 森林科学講座年次指定無し
講座外科目
選択

授業の目標
 最近、国の政策から身近な市町村の具体的な施策まで、様々なレベルで、住民、市民、国民の意見を採り入れ、政策の決定に反映させていこうとする試みが行われるようになってきた。これは、これまで、行政の意志決定が閉鎖的に行われてきた結果、自然環境の破壊や国民の権利の侵害、健康の阻害など多くの深刻な問題が起きてきたことに対する反省に基づくものだと考えることができる。また、都市や農山村において、住民が主体となって、まちづくり、集落づくり、公園づくり等に取り組み、計画策定や管理方針を決めていこうという気運も高まってきた。
 しかしここで厄介なのは、たくさんの人間が意思決定や計画策定に参加すればするほど、一つの案を作成したり、一つの事柄を決定するのが困難になることである。何かマニュアルのようなものが存在すれば楽なのだが、現実はさまざまな事情が複雑に入り組んでいて、それほどことは単純ではない。「合意形成論」が生まれる由縁である。この授業では、こうした問題にどのように取り組んで行くべきかをいろいろな角度からなるべく具体的な例を材料に考えていきたい。

概要と計画
 授業は、内容から大きく3つに分かれる。一つは、「いまなぜ「合意形成」なのか?」である。近年、なぜ合意形成が注目されているのかについて、特に様々な領域の意志決定、計画策定場面で「参加」の一般化の経緯を踏まえて説明する。二つ目は、「合意形成の理論」である。経済学、経営学や社会学では合意形成に関係した理論(紛争の理論も含む)がいくつかあり、また事例分析から導き出された経験則的な理論もある。これらについて簡単に説明する。三つ目の「合意形成の実際」では、企業などの組織内の意志決定における合意形成の問題、むらづくり計画・土地利用計画などのコミュニティーにおける計画策定過程の合意形成の問題、自然保護問題などの大きく意見が対立する紛争過程における合意形成の問題の3つについて、事例をもとに望ましい方向について議論する。

・いまなぜ「合意形成」なのか?           8.ロールプレイング演習
1.参加と合意形成                 ・「合意形成」の実際
2.歴史的経緯                   9.組織内意志決定の場合(1)
3.国内外の現状                  10.組織内意志決定の場合(2)
4.ディベート演習                 11.コミュニティーの計画策定の場合(1)
・「合意形成」の理論                12.コミュニティーの計画策定の場合(2)
5.決め方の論理(1)               13.利害関係者間の紛争の場合(1)
6.決め方の論理(2)               14.利害関係者間の紛争の場合(2)
7.紛争の論理                   15.レポートの評価会

教室外の学習
 できるだけ、世の中で起こっていることに興味を持ち、新聞などを読んでいて欲しい。合意形成論の素材は、実はそこら中に転がっているのだ。
 レポートについては、授業期間を通じて準備してもらい、あらかじめ提出されたレポートを最終回に全員で検討する。ディベート、ロールプレイングも時間外の事前準備が必要である。

教科書、参考書
 教科書はない。毎回資料を配付する。
 参考書:佐伯 胖『「きめ方」の論理ー社会的決定理論への招待』東京大学出版会、木平勇吉編『森林環境保全マニュアル』朝倉書店など。

授業の形式
講義+ディベート、ロールプレイング演習

成績評価の方式
リスポンス・カード(出席点含む)30%、レポート60%、評価会10%

履修に当たっての留意点
関連科目として、「地域計画学」、「NPO論」、「環境保護思想史」の履修が望ましい。