森林・雪氷水文学

担当教官(所属、所在)
井良沢道也(農林環境科学科)

対象学生 科目の種別 開講学期 単位数
農林環境科学科2年次講座科目
必修
後期2単位

授業の目標
 地球は「水の惑星」と呼ばれていますが、そのうち、実際に私たちが使える水の量はほんのわずかです。このわずかな水で人間が生活できるのは水の循環があるからにほかなりません。陸地の30%を占める森林は水循環と大きく関わっています。森林は洪水や渇水を緩和して「緑のダム」の役割を果たしています。さらに地球規模の環境問題の中で森林の位置づけは熱帯林の保護などに見られるように非常に重要になっています。 
 こうした水の循環を理解することは土砂、雪氷災害の誘因を理解する上で重要であるばかりでなく、地球・大陸規模での気象循環形成を知る上でも非常に重要です。森林は高い日射の吸収率、高い樹高で特徴づけられる地表面と言えます。一方、積雪は森林とは反対に低い日射の吸収率となめらかな表面で特徴づけられます。このために森林、積雪が存在すると水循環に対して草地、裸地などの他の地表面とは異なった影響を与えています。このような森林が水循環の各過程に対し、どのような影響を与えているかを理解することを目的としています。
 このように森林科学を学ぶ上において、本学問は森林の持つ様々な公益的機能を定量的に理解する上で大変重要な科目と言えましょう。また国T試験(森林水文分野)の傾向と対策についてもふれたい。このように森林科学を学ぶ上において、本学問は森林の持つ様々な公益的機能を定量的に理解する上で大変重要な科目と言えましょう。さらに、関連科目として「土質工学」、「水理学」、「応用力学」など基礎分野についても補足する。

概要と計画
 水循環の各素過程(降水、蒸発、蒸散、流出など)に対する森林の影響を理論的、実証的に説明する。各現象の理論的理解に中心をおき、応用的側面の一部は砂防学実習の中で説明、演習を行う。

 授業計画

第1回 講義の概要(森林・雪氷水文学とは)
第2回 山岳・森林地における水循環・水収支の概説
第3回 山岳地での降雨特性
第4回 蒸発散の理論
第5回 蒸発散の実際と推定法
第6回 流出(ハイドログラフ)
第7回 流出(土壌内の水の浸透理論)
第8回 流出(土壌内の水の挙動の実際)
第9回 流出モデル(流出の予測)
第10回 山岳地域での降雪・積雪分布
第11回 融雪の熱収支と森林の影響
第12回 融雪流出と森林
第13回 森林と水質形成機構
第14回 森林の存在と地球環境
第15回 森林と水循環(まとめ)

教室外の学習
予習、復習を必ず行うこと。毎週演習課題を課すが、自力で解くことが重要である。 

教科書、参考書
教科書として「森林水文学」塚本良則編(文永堂)を使用する。参考書として「森林環境科学」(朝倉書店)、「地球環境時代の水と森」(林業調査会)、「地域環境水文学」丸山利輔編(朝倉書店)、「水環境の気象学」近藤純正編(朝倉書店)、「新しい水文学」日野幹雄編(朝倉書店)、「農業気象の測器と測定法」日本農業気象学会関東支部など 。「土質工学」・「水理学」・「応用力学」についてはオーム社の「絵解きシリーズ」を用いる。

授業の形式
OHP、スライド等も交えて授業を行う。毎週、演習課題を課しレポートを提出する。

成績評価の方式
学期末の試験結果及びレポート提出、出席状況での評価とする。

履修に当たっての留意点
質問は授業中を含め随時受け付ける。本授業でもふれるが、「土質工学」・「水理学」・「応用力学」については他講座開講の授業を受講するのが望ましい。なお本科目は、本学から多数の合格者を出している国T農学V砂防職の基礎科目であり、試験の動向と対策についても講義するので、ぜひ4年次以降には受験して欲しい。