■担当教官(所属、所在) |
土屋俊幸(非常勤講師、農林環境科学科) |
■対象学生 | 科目の種別 | 開講学期 | 単位数 |
農林環境科学科 地域マネジメント学講座3年次 | 講座科目 選択 | 後期 | 2単位 |
■授業の目標 |
環境保護の思想の成り立ちをみると、ある環境を保護しようとする個人や団体の具体的な行動を背景にして、その運動を擁護する考え方として生まれ、それが次第に一般性を獲得していった場合が多い。従って、環境保護思想の進化を理解するには、環境保護運動の発展を理解しておく必要がある。そこで、この授業では、環境保護運動の歴史と環境保護思想の歴史について並行して議論する中から、全体像を把握する形を取りたい。また、上記理由から、環境保護思想はきわめて実践性の高い「思想」であり、運動の現場との関係が重視されるべきである。具体的な運動の事例分析から「思想」について考えていきたい。 |
■概要と計画 |
授業の大きな柱の一つは、アメリカの環境保護思想と環境保護運動についての議論である。ソロー、ピンチョ、ミュアらから始まるアメリカ的な自然保護思想が、よりラディカルなディープ・エコロジーの思想を生みつつ、現在の世界で非常に大きな影響力をもつ実践的な環境保護思想へと発展していく経緯を、国立公園運動、ウィルダネス制定運動から始まり巨大な環境保護団体に主導された組織的な運動へと発展し、さらに新たな世界的な潮流と成りつつあるエコシステムマネジメントを生んだ環境保護運動の軌跡と関連させつつ述べる。 次の柱は、日本とヨーロッパの状況に関する議論である。これらの地域の環境保護思想ないし環境保護運動は、国立公園制度に典型的に表れているように、アメリカの影響を大きく受けているが、それぞれの地域が持つ独自の自然的環境、社会経済的環境、文化的環境のなかで、やはり独自の発展を遂げてきた。ここでは、日本とイギリスの環境保護運動の歴史について、アメリカと対比させつつ述べ、その背景にある両国の人々の自然に対する認識のしかたを考える。 最後に、住民・市民という視点からもう一度自然保護について考え直す試みを、受講生との議論を交えて行いたい。 ・アメリカの環境保護思想と環境保護運動 ・日本の環境保護 1.19世紀の自然保護運動とその思想 9.日本の自然保護運動の特徴とその略史 2.自然保護運動の発展(20世紀前半) 10.日本の自然保護制度 3.環境保護運動の展開(20世紀後半) 4.エコシステムマネジメントの誕生の意味 ・保護地域と住民・市民 5.アメリカ的環境保護思想の普遍化 11.住民にとっての保護地域の功罪 12.「生活」を守る ・ ヨーロッパの環境保護 13.保護すべき「自然」とは 6.英国の自然保護運動、田園保全運動の流れ 7.歩く権利・国立公園・ナショナルトラスト 14.レポートの評価会 8.ヨーロッパのアクセス権 |
■教室外の学習 |
レポートについては、授業期間を通じて準備してもらい、あらかじめ提出されたレポートを最終回に全員で検討する。 |
■教科書、参考書 |
参考書:鬼頭秀一『自然保護を問いなおす』ちくま新書、岡島成行『アメリカの環境保護運動』岩波新書、鬼頭秀一編『講座人間と環境12 環境の豊かさをもとめて』昭和堂、小原秀雄(監)『環境思想の系譜1〜3』東海大学出版会、内山節『自然と人間の哲学』岩波書店。 |
■授業の形式 |
講義 |
■成績評価の方式 |
リスポンス・カード(出席点含む)30%、レポート60%、評価会10% |
■履修に当たっての留意点 |
関連科目として、「農林環境政策論」、「合意形成論」の履修が望ましい。 |