岩手大学大学院 農学研究科

キメラ動物の有用動物生産への応用

 動物科学専攻
実験動物学
教授
農博
高橋 壽太郎
プロフィール  

 キメラとはギリシャ神話に由来するもので、ライオンの頭に羊の体、蛇の尾を持った怪物のことです。そのことから、生物学的には同一個体中に遺伝子型の異なる細胞または組織がそれぞれ独立して、互いに隣り合わせに存在する複合個体のことで、正常な生体機能をもっているものとされています。それ故、キメラ個体は遺伝子型の異なる二個、またはそれ以上の受精卵子の集合や、一個の受精卵子に各種細胞、核および遺伝子導入などにより人為的に作られた個体であります。これまで、マウス、ラット、ハムスター等の実験動物を用いて同種および異種間キメラ胚の初期発生能、キメラ個体の毛色分析、キメラ個体の性分化分析および遺伝性疾患の発現機構とその救済現象について研究を進めてきました。今後、このキメラ現象を用いて、次の三課題について研究を進めることにしています。 (1)マウス胚性幹細胞(ES細胞)を利用した形態形成に関する研究:これは骨格菌特異的マーカーを用い多骨格筋形成の解析を目的とするものです。マウスES細胞はマウス初期胚に由来する多能性(万能)細胞であり、細胞マーカーの作製に利用できます。細胞マーカーはあらゆる細胞型においてあらゆる発生段階で認識できることが望ましいのです。しかし、特定組織の分化の解析には、組織特異的細胞マーカーが有効です。そこで、骨格筋特異的細胞マーカーを作製し、これを利用してキメラ個体におけるES細胞の骨格筋への分化形成について解析を行います。この研究はES細胞を用いた組織・器官再生の可能性を探る基礎的研究であり、再生・修復医学に結びつく研究であると考えています。 (2)キメラヘテローシスに関する研究:キメラ動物にはキメラヘテローシス効果があるといわれているが、動物の成長率に関するキメラ個体のヘテローシス効果およびその子孫における育種学的効果について研究を進め、動物生産への応用に結びつけたいと考えています。 (3)異種動物間妊娠誘起に関する研究:現在、ラット・マウス間のキメラ胚発生を利用して異種間妊娠の成立について分析を行っています。この研究は、絶滅に瀕している野生動物や稀少動物を保存する手段として異種・異属動物間妊娠の利用の可能性を探究するものです。