会長挨拶
日本家畜臨床学会
会長 佐藤 繁
今年4 月から日本家畜臨床学会の会長を仰せつかりました佐藤繁です。元より微力ではありますが、皆様のご協力を頂きながら何とか務めたいと考えています。会員の皆様には、これまでにも増して学会の運営にご理解とご協力を頂き、積極的に参加して頂くようお願いします。
私自身は、元来「世の中を変えるのは若者の力である」と考えて行動してきました。従来のように世の中が同じことを繰り返しながら、ゆっくりと変化していた時代には、多くの経験を有した年長者がリーダーとして相応しいと思われました。しかし、現在のように、以前とは比較できないほど急激に変化する時代において、これら変化に的確に対応し、経験したことのない局面や新しいトラブルに対応して未来を切り開くことができるのは、まさに現在を生きている若者であるというのが私の基本的な考えです。この考え方のために、会長就任を引き受けることについては大いに悩みました。しかし、私に求められているのは、まさに次世代を背負う若者が相応の立場に立つまでの繋ぎ、言い方を変えれば、次の世代を背負う人材の育成であると心得て、会長を引き受けさせて頂いた次第です。
さて、改めて日本家畜臨床学会の現状をみると、いくつか解決するべき課題があります。酒井淳一前会長のリーダーシップのもと、学会運営に関して多くの改革が図られてきました。ただし、過去2 年間におけるCOVID-19感染の全国的な拡大や変異株の出現などが最近の学会運営にも影響を及ぼしています。このような状況のもと、私はウィズコロナおよびアフターコロナを見据えて、以下の事業に取り組む必要があると考えています。
まずは、学会組織の再整備に関することです。残念なことですが、ここ数年、会員数がわずかに減少しています。会員数の確保は、学会の存在意義と体制強化にとって極めて重要で、以前から理事会などで対応策を模索してきました。私は今後、若手の臨床獣医師と家畜衛生分野の公務員獣医師をターゲットにして学会への加入を推進し、新規会員を確保したいと考えています。若手臨床獣医師の学会加入には、担当理事のご協力を頂く以外に有効な手段はないのですが、さらにきめ細かい推進をお願いし、あわせて東北地区を中心に公務員獣医師の学会加入を勧めたいと思います。このために、担当理事とともに各県に出向いて学会活動の説明やトピックスに関する勉強会等を開催し、基本に返って学会の広報活動に取り組みたいと考えています。
また、従来から推進してきた大動物臨床研究会および九州沖縄産業動物臨床研究会との連携をさらに強化したいと考えています。学会誌の共有以外にも学術活動の一層の充実強化を目指して相互交流を推進し、各大学の産業動物と家畜衛生分野の研究者のご協力を得て、獣医師の卒後教育や学術交流に取り組む体制を構築したいと思います。さらに、北海道と九州沖縄以外の地区においても、研究会等との連携を模索したいと考えています。これらの地域においては、当面日本家畜臨床学会に入会して頂き、その間に地域研究会等の組織化に協力することを想定しています。
一方、学会活動の一層の活性化にも取り組む必要があります。この2 年間、COVID-19 の感染拡大に伴い、対面での学術集会が開催できないこともあり、学会活動が停滞しているのではないかとの指摘もあります。実際にはオンラインで学会を開催したり、若手獣医師の部会活動が行われたりと、学会活動は着実に進んでいます。今後、学術集会については対面での開催を見据えながら、オンラインでの開催も想定して準備を進めます。学術集会におけるシンポジウム等の企画に当たっては、若手獣医師を念頭において教育講演や新しいトピックスをテーマとするよう留意します。また、公務員獣医師の参加を促すために家畜衛生や感染症のテーマを設定することも考慮します。さらに、当然のことではありますが、女性会員が参加しやすい環境を整備する必要があります。
さらに、産業動物臨床学雑誌の更なる充実に努めたいと考えます。臨床獣医師の先生方による投稿の推進を図るため、各理事のご協力を頂いて地区発表会の発表者に対してきめ細かく投稿を依頼し、アドバイザリーボードの実質化を含めて投稿原稿のブラッシュアップにより学術的・臨床的価値の高い論文の増加を図りたいと思います。また、大学教員や最前線の研究者による総説を増やしたいと希望しています。
以上のように、日本家畜臨床学会の運営にあたって、東北地区あるいは東日本地区を中心とした臨床獣医師等による学会の組織体制を維持し、大動物臨床研究会や九州沖縄産業動物臨床研究会および各地域組織との連携を推進して、会員の学術研鑽と親睦を深める学会活動を行いたいと考えています。会員の皆様には、一層のご理解ご協力を頂くようお願いします。