新設学科の紹介

(1)農業生命科学科

本学科では,遺伝子工学などのバイオサイエンスを基にして,環境と調和した農畜産物生産や新たな生物機能の開発および安全な食品の製品化など,生物資源のより高度な利用について,分子レベルからフィールドレベルまで多岐にわたる教育研究を行います。
即ち,寒冷地に適した作物や動物の作出のための,分子レベルでの生物・生命の特質の解明,フィールド科学の手法を取り入れた農業生産技術の基礎的問題の解明,遺伝子工学など先端的なバイオサイエンスに依る生物の機能や生存生長の仕組みの解明,および健康維持機構の解明と人間の健康に貢献する食品の開発,などについての教育研究を,附属農場あるいは附属寒冷バイオシステム研究センターの施設教員と協同して行います。このため,本学科に植物生産学,動物科学,生物機能科学および食品健康科学の4講座を置きます。

植物生産学講座
本講座は,人間の生存および快適な社会生活に有用不可欠な植物資源の開発利用に関連する分野について包括的に理解できる能力と視野をもつとともに,専門分野についての豊富な知識をもち自己成長できる能力を備えた人材の育成を教育目標としています。具体的には食用作物,園芸作物や飼料作物などの食料生産に関わる植物および花卉,環境緑化植物など人間生活に潤いを与える植物などを研究対象とし,それらの生理,生態,形態,環境適応,遺伝,繁殖および植物生産の基盤となる土壌・気象などの生育環境について教育研究します。また,生産の質的・量的改善や維持管理に関しては,附属農場での実習等を通して教育研究します。

動物科学講座
本講座では,地球の環境保全,畜産公害などに配慮しながら,効率的な動物生産を目的とする動物産業の発展と生命科学の一環として,人類の生存と繁栄のために必要な高度な科学技術の開発をめざし,家畜(牛,馬,豚,羊,山羊,鳥など)のみならず,実験動物,野生動物などの動物を対象に,1)動物の形態,生理,2)栄養,飼養技
術,飼料資源の開発,3)遺伝,生殖人工授精技術,4)動物の生態,衛生および管理技術,畜産公害の防止,自然生態系にねざした生産技術の開発,草資源を有効利用する草地造成技術,野生動物の保護,5)畜産物の保存・加工技術と安全性など健康食品としての生産・利用技術の習得,畜産物の流通,畜産経営,などに関わる学問並びに科学技術を体系的,総合的に学ぶことができます。

生物機能科学講座
近年の生物学,化学,物理学などの基礎的学問分野の発展に伴い,バイオサイエンスと呼ばれる学問分野が急速に発展しています。この分野の目的は,自然界における動植物,微生物の機能や生存生長の仕組みを,分子,細胞,個体,生態系の各レベルで解明すると同時に,それを人類生存に役立てようとするものです。その内容は,生物のゲノム解析をはじめ,生物の生理,形態,生理活性物質等の形質を決定する仕組み,その遺伝や遺伝子発現機構,さらにそれら生物の持つ機能の有効利用など多岐に渡ります。本講座では,この分野を中心に農場実習から遺伝子工学まで幅広い教育研究を行うことにより,自然界に対する理解力に優れ,創造性豊かで思考能力の高い人材の育成を目指した教育研究を行います。

食品健康科学講座
高齢化社会においては,肉体的,精神的に健康な生活を送ることが重要です。このための食品の役割はきわめて大きいと考えられます。このような社会の要請に応えるため,本講座では,食品を構成する成分,栄養効果,健康維持の機構,新しい食品の開発などの教育,研究を通じて,健康維持に貢献する食品とは何か考えます。一方,東北地方の農業振興,産業振興のためにも,健康への貢献という付加価値の高い食品の製品化を検討します。本講座ではこれらの目標を達成するために,講義だけではなく,多くの実験やインターンシップなどの実習を行い,産業や地域との関係を学ぶことにより,自分で問題を解決できる人材,建設的な発想ができる人材を育成します。

講座名主要授業科目

植物生産学 作物学汎論,食用作物学,草地学,草地生態学,果樹園芸学汎論,果実発育生理論,疏菜園芸学汎論,花卉園芸学,生物元素循環論動物科学 飼料機能学,動物栄養学,家畜飼養学,家畜生産生理学,動物繁殖学,動物遺伝育種学,家畜管理学,畜産経営学
生物機能科学 機器分析化学,有機化学,植物病理学,応用昆虫学,昆虫利用機能学,植物育種学,植物生理学,農薬利用学,微生物学概論,微生物生理機能学食品健康科学 食品化学,栄養化学,食品工学,食品衛生学,動物食品学,栄養健康科学,美味学,地域資源健康論



(2)農林環境科学科

本学科では,環境に調和した農林業のあり方を追求するとともに,農林業を中心とした循環型社会の構築,および固有の風土を育んできた農山村地域の健全な維持発展に資する教育研究を行います。すなわち,(1)農地,森林,水域等から構成される地域環境のモニタリングと構造解明,その保全のための技術,(2)農林生産過程にお
けるリサイクル技術,およびバイオマス等のリサイクルエネルギー開発,(3)環境と調和した農林業の生産基盤の整備・保全,(4)農山村地域の自然・文化・景観の構造把握とその保全のための政策立案,および住民参加と環境教育の手法を主たる対象とし,附属農場,演習林および現場でのフィールド体験を重視した教育研究を行います。

地域マネジメント学講座
本講座では,農山村に存在する地域資源の管理に関する問題の解明と,その解決のための諸施策に関する教育研究を行います。対象となる地域資源としては,農地や森林などの土地資源,河川・湖沼などの水資源,野生の動植物,当該地域に関わる人材,当該地域で育まれた文化や歴史など多様である。本講座では,これらの地域資源を総合的に管理し,持続可能な地域社会を実現するために,自ら考え行動できるような人材育成を目標としています。教育に当たっては,本講座の実践的性格に鑑み,附属農場や附属演習林を積極的に利用するほか,地域資源の管理に携わっている地方自治体や民間団体とも広く連携をとりながら,多様な学習機会を用意しています。

森林科学講座
本講座では,地域の重要な資源であると同時に地球環境を形成する重要な要素である森林を主な対象とし,森林の持つ多面的な機能を明らかにすることで,森林と周辺環境の相互作用,森林の保全,森林資源の再生,収穫,利用をはじめ,森林と人間との関わり全般について考究します。こうして森林を総合的に理解し,その利用のあり方および技術に関する教育と研究を行います。特に、森林内および研究室における実験や実習を重視し,複数の学習メニューを用意することによって多様な観点から森林科学を学べるよう配慮しています。そして,広く森林や林業・林産業に関わることができる積極的で創造力豊かな社会人になれるよう,教育や研究を行います。

地域環境デザイン学講座
地域環境デザイン学講座では,地域の土地及び水資源の開発・利用を,地域環境の保全・復元と両立させながら,計画・デザイン(設計)する実践的な技術者の養成を目指しています。基礎的分野として,地盤や構造についての力学,水の流れや水循環,コンクリートや各種構造物,測量,システム工学,情報処理,土地や水の環境計測などを勉強した後,応用的分野として,農地の開発・保全や水資源計画,農村地域の自然と生活環境の保全,景観の保全などのそれぞれについて学習するとともに,実践現場の見学や体験実習,多くの事例の分析・検討を通して,地域の総合的な計画・設計技術と手法を習得していきます。

リサイクル生物生産工学講座
化石エネルギー使用を減らし,環境調和をはかったリサイクル生物生産システムを確立することが,21世紀の人類の課題となっています。そのために本講座では,自然エネルギーやバイオマスエネルギーなどのリサイクルエネルギーを電気エネルギーなどに変換利用したり,精密農法によってエネルギーや農薬使用を減らすなど,自然環境と調和をはかった生物生産システムについて,あるいは,農産物から食品に加工されるまでの,低コスト・高品質・省エネルギー加工システムについての教育と研究を行い,21世紀の豊かな社会を担いうる創造性に冨んだ人材の育成を目指します。

講座名主要授業科目

地域マネジメント学 地域マネジメント学概論,農林環境経済学,環境政策論,アグリビジネス論,日本農業論,山村経済論,開発経済学,地域計画学,地域開発政策論,地域おこし論,ランドスケープエコロジー
森林科学 森林環境と生物,樹木の形態と組織,林業生産工学,森林・雪氷水文学,森林造成学,樹木資源学,森林資源化学,木材物理学,木質材料の設計,砂防学地域環境デザイン学 農地工学,農村環境デザイン学,景観工学,水資源プランニング,農地デザイン学,水圏環境工学,土壌物理学,水理学,土木材料学
リサイクル生物生産工学 リサイクル工学,リサイクルエネルギー学,生物環境工学,農業生態工学,生産基盤機械学,農業リサイクルシステム学,生物加工工学,農産リサイクル学



(3)獣医学科

今日,生態系の破壊,新興・再興感染症の勃発,環境ホルモン汚染などは,人類の生存に大きな問題を投げかけています。一方,子供たちの心の荒廃や弱者に対する福祉の遅れなどの社会問題が進行しています。これらの問題に対処するには,同一の生態系で人と動物が協調的に共存することが望まれています。本学科では,動物を介在する人と動物の健康で安全な生活や,両者の福祉を併せて増進するための教育と研究を行うと同時に,人と動物の共存関係の確立をめざしてヒューマン・アニマル・ボンドに関する領域を強化することによって,安全性の高い食料動物の確保,動物と人類の生命保護,動物を介した情操涵養に貢献します。そのために,附属農場(牧場)および附属家畜病院において実地教育および臨床実習が実施されています。

基礎獣医学講座
本講座は獣医学の根幹をなす動物医療にとって必須となる知識,すなわち生命の基本的な成り立ちと外部刺激に対する反応を,個体を単位として総合的に理解するための教育研究を行います。具体的には,動物体を構成する各種器官,組織,細胞の構造と機能,生命の維持・恒常性に関する各種生理機能とその制御調節機構,生体内の情報受容・伝達機構,薬の作用,毒性,発生・成長・老化過程における生命現象を,分子レベルにまで踏み込んで解明するための教育研究を行います。さらに,動物の高次神経機能(ヒューマン・アニマル・ボンドの形成機能)に精通した人材養成を目的とした教育研究を行います。

応用獣医学講座
本講座は,動物および人に対する侵襲因子(毒物,環境ホルモン,プリオン,ウイルス,細菌,真菌,寄生虫,原虫など)の性状と検出法,宿主に対する侵襲作用,および遺伝病,代謝病,腫瘍など,全ての病気の発生機序について形態並びに個体から分子に至るさまざまのレベルで理解するための教育研究を行います。教育研究対象は,実験的手法によって作出した疾病のみならず,家畜病院に来院した動物の疾病も含んでおり,臨床獣医学講座との連携を図りながら,その原因追及・病態解明を行います。さらに,動物の疾病予防対策(家畜衛生)と食品の安全性(公衆衛生)に関わる衛生管理手法の教育研究を行います。

臨床獣医学講座
本講座は各種動物の諸疾病の発生機序および病態を把握できる能力の啓発に重点をおいた的確な診断,治療および予防法を理解できる教育研究を行います。また,各種疾病の病因の解明と新しい診断法や治療法の開発をめざした教育研究を行うとともに,健康な動物の行動や飼養に貢献できる臨床獣医学に関する教育研究を行います。さらに,実践的教育研究としては,附属家畜病院の診療を通じてヒトと動物の関係を理解し,かつ附属農場や近隣農家の診療実習を通じて農学と畜産学を理解することにより,社会の発展に貢献できる獣医師の養成をめざした教育研究を行います。

講座名主要授業科目

学科共通 獣医学概論,野生動物学,獣医師関連法規,家畜衛生学,人・動物関係学
基礎獣医学 獣医解剖学,獣医組織学,動物発生学,獣医生理学,獣医生理化学,獣医薬理学,放射線生物学
応用獣医学 動物病理学総論,魚病学,獣医寄生虫学,獣医寄生虫病学,獣医細菌・真菌学,獣医ウイルス学,獣医伝染病学,獣医免疫学,獣医公衆衛生学,実験動物学
臨床獣医学 獣医内科学,獣医外科学,獣医臨床繁殖学,獣医放射線学,獣医ME診断学,獣医臨床病理学,獣医臨床腫瘍学


| 戻る |