ランドスケープエコロジー(後期開講)



授業の目標

 人間を含む生き物すべては生態系の一員である。この生態系を扱うのが生態学であり,生態系内部での構造や機能を研究の対象としてきた。そのため,個々の生態系は隣接する生態系からはまったく影響を受けない独立の系として扱われてきている。しかし,実際には,物質・水循環や動物の移動,撹乱の伝播などを通して,互いに影響を及ぼしあっているのが一般的である。こうした生態系間の相互作用を理解するためには,生態系の複合体に相当するLandscapeを対象にすることが必要である。このLandscape内で生じる様々な生態学的現象を,その空間的構造の特性を考慮して研究しようとするのがLandscape Ecology(以下,LEとする)である。この講義では,Landscapeレベルで生じている様々な現象を,LE的観点から理解してもらうことを目標とする。


授業の概要

 総論では,Landscapeの定義,時空間スケールという見方を整理した上で,LEの必要性,目標,基本的手法について解説する。また,Landscape形成における撹乱の重要性についても実例をまじえ解説する。

 各論では,陸域の大部分を占める農山村,森林,河川,都市を例に,Landscapeレベルで生じる現象のいくつかについて解説する。


授業計画

    総論

  1.  LEにかかる用語の定義

  2.  時空間スケールによる現象の整理

  3.  LEとは

  4.  Landscapeの形成と撹乱

    各論(Landscapeの構造)

  5.  農山村地域のLE

  6.  森林域のLE(小地形レベル)

  7.  森林域のLE(微地形レベル)

  8.  河川流域のLE

  9.  都市域のLE

  10.  盛岡周辺のLandscape構造の変遷

    各論(Landscapeの機能)

  11.  物質・水循環とLandscape

  12.  動物の生息地とLandscape

    試論

  13.  環境保護とLE

  14.  生物保全とLE

  15.  Landscape管理


参考書

沼田 眞編著,「景相生態学」(朝倉書店,1996)
日本造園学会編,「ランドスケープエコロジー」(技報堂出版,1999)


授業の形式

OHPを用いて授業を行う。また,OHPと同じ資料をできる限り配布する。

成績評価の方法

期末レポート,および授業時提出のミニレポートにより評価を行う。

履修にあたっての留意点

・このシラバスは平成12年春時点で作成されたものなので,若干の変更が生じることもある。詳細は第1回目の授業で説明する。

・講義内容に関する質問は授業中,研究室にて随時受け付ける。

・この科目は知識の獲得より,LEの見方・考え方を理解してもらうことに重点を置いて講義する。そのため,講義で紹介する個別現象(例えば森林動態,動物の生態など)を深く理解するためには,この講義だけでは十分でない。各自このシラバスを参考に,自分が必要と考える科目を積極的に受講して欲しい(第1回目の授業でアドバイスする)。

その他

この講義に関する問い合わせは國崎貴嗣(2号館4階:kunisaki@iwate-u.ac.jp)まで。

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