---はじめに---

 森林内は決して安全な場所ではありません。上から下までたくさんの危険に満ちています。これは演習林だけではなくすべての森林にいえることです。多くの知識を持ち、怪我をしないよう気をつけながら森林を利用しましょう。

 何か異常が起こり動けなくなった場合、林内にいること自体を誰も知らなければ助けようがありません。森林に出かける場合は少なくとも家族や研究室内の友人などには行き先を告げるよう心がけましょう。演習林内に入る場合は事務所に寄ってどの辺に入るか、何時ごろ帰ってくるかを告げましょう。また帰りも事務所に寄って一声かけましょう。面倒かもしれませんが万が一のときのための自分に対する保険だと思ってください。


---周囲に注意!---
 
 林内に入りデータ収集や試料採集に集中していると周りが見えなくなることがあります。周囲が見えていないと周りの小枝が目や耳に入るといった小さなことから、いつの間にか崖のそばだったとか山の中で位置がわからなくなるなど大変なことまで起こりえます。
 林内では見るだけでなくいろいろな音にも注意してください。ガサガサと動物が近づいてきた音、ゴロゴロと遠くで鳴る雷の音、ブンブンと飛び回るハチの音などが聞こえる場合は注意が必要です。周りが見渡せないヤブの中では音が重要となります。イヤホンやヘッドホンをしていると危険な音が聞こえませんのでしないようにしてください。


---頭上に注意!---
 
 
林内で頭上を見上げるとほとんどの場所が樹木の枝や葉に覆われているはずです。それらが落ちてくることはないと考えるかもしれませんが、そんなことはありません。
 何もないのに健康な樹木の枝がいきなり落ちてくるということはまずありません。しかしいくら健康な木でも風が強かったり雪が積もっていたりすると枝が折れ落ちてくることもあります。健康ではない木、枯れた幹や枝がある木、折れた枝が他の枝に乗っている状態のときなどはいつそれらが落ちてきてもおかしくはありません。枯れた木はそれ自体が倒れてくるかもしれません。
 残念ながら、いくら危険とわかっていても、そのすべてを発見し取り除くことは困難です。なぜなら地上からは健康に見えても見えない場所が腐っていたり、葉が生い茂り危険を発見することすら難しかったりするからです。また、林内には樹木が人間にとって危険な状態あろうとも研究のため一切手を加えない場所もあります。
 調査や研究で同じ場所を何度も歩く際や調査区画を設定する際は、周囲に枯れた木はないか、頭上に落ちてきそうなものはないか確かめましょう。強風のときや樹上に雪が乗っている場合はなるべく林内に入るのは避けましょう。

 左写真が枯れ枝、右写真は枯れ木です。
冬ならこのように見つけやすいのですが、葉が生い茂る時期ですと簡単には見つけられません。
 離れているから大丈夫と思っていても枯れた木や枝は幾重にも折れたりほかの枝にあたりバウンドしたりなどしてあらぬ方向へ飛散します。
 林内に入る際は十分注意してください。


---足元に注意!---

 
演習林内には平坦な場所から急峻な斜面まで様々な地形があります。それらの場所も植物が生えていたり枝が落ちていたり根が張り出していたりとまったく平らというような箇所はありません。歩く際は転ばないよう注意してください。
 転ぶくらい平気だろうと思うかもしれませんが、林内にはいろいろなものがありますので手をついた時に松の葉が刺さったり、倒れまいと思わずトゲのあるハリギリをつかんでしまったりと余計な怪我をする場合もあります。
 新植地や造林地などは草が刈り払われて一見安全そうに見えます。しかしながら、ササや萌芽の切跡などは槍のようになっていて突き刺さる可能性があります。勢いよく踏んづけたら林業用ブーツをつきぬけ足に刺さったということもあります。
 林内ではなるべく走らないで足元の安全を確かめながら歩いてください。