第2章
アプリケーションソフト
アプリケーションソフトには多種多様なものがある。本書では、レポートやゼミ資料の作成、卒業論文の作成などで多用する文書作成ソフトや表計算ソフトについて、はじめに解説する。使用する主なソフトはMicrosoft Word(以下、Wordと記す)とMicrosoft Excel(以下、Excelと記す)であり、主にWindows用で解説するが、Macintosh用での相違点にも触れる。さらに、Macintosh用の統合ソフトとしてApple Worksの概略を解説する。これらを活用することで各自のレポート作成技術を磨いて欲しい。
一方、レポート作成技術と同様にプレゼンテーションを行う技術についても、学生時代に是非身に付けて欲しい。本書ではMicrosoft PowerPoint(以下、PowerPointと記す)の基礎的な操作方法およびプレゼンテーションを成功させる幾つかの秘訣を紹介する。また、現代社会では、銀行預金のオンラインシステムなどのようにコンピュータを使ったデータ検索が不可欠となっている。ここではデータベースの概要や作成方法を解説するとともに、幾つかの活用事例を紹介する。
2.1 文書作成
2.1.1 Word (Windows用)
2.1.2 Word (Macintosh用)
2.2 表計算
2.2.1 Excel (Windows用)
2.2.2 Excel (Macintosh用)
2.3 Macintosh用統合ソフト(Apple Works)
2.3.1 文書作成
2.3.2 表計算
2.4 PowerPointを用いたプレゼンテーション
2.4.1 プレゼンテーションとは
プレゼンテーションという言葉を聞くと,企業の営業戦略会議の場面などと結びつき易いが,実は学生時代にしっかりと身に付けたい技術である.なぜなら,プレゼンテーションとは自分の得た情報,自分の意見や作品を相手に伝達する場であり,情報伝達能力に優れる大卒学生を実社会は求めているためである.
さて,プレゼンテーションはレポート作成に比べて数段難しいとも言える.レポートの場合,読者の精読が期待できる.一方,プレゼンテーションでは限られた時間の中で,聴衆に分かり易く,かつ正確に情報を伝達することが要求される.そのような技術は即座に身に付くものではない.しかし,プレゼンテーション用ソフトウェアとして進化してきた
PowerPoint の使い方を知るにつれ,効果的なプレゼンテーションの要点を学ぶことができる.本節ではPowerPointの基本的な操作方法を紹介するが,それを基に各自でこのソフトを駆使する技術を身に付け,情報伝達能力と技術の向上に役立てて欲しい.
最後にプレゼンテーションで使う機器の変遷について触れておく.教員や大学院生の学会発表,学生の卒論発表を例に取ると,一昔前は作成資料を接写して35mmスライドにするか白黒OHPフィルムに複写していた.その後, PowerPoint などが普及するにつれ,カラーOHPが主流となっていく.最近では低価格化による液晶プロジェクターの普及が進み,卒論発表はもとより授業やゼミでも液晶プロジェクターが使える環境になりつつある.すなわち,PowerPointの本領が発揮できるオン・スクリーン・プレゼンテーションの環境が整ってきた.カラーOHPを作るより経済的,ミスプリントを即座に訂正できる,アニメーション機能で話の流れを効果的に演出できるなど,多くの利点を享受できる.
2.4.2 プレゼンテーションを成功させる秘訣
はじめに,プレゼンテーションに関わる一般的な注意事項を述べる.プレゼンテーションでは聴衆に分かりやすく,かつ正確な情報伝達が求められるが,具体化には何に注意すれば良いのであろうか.基本的なことを幾つか列記すると,
@
与えられた時間に応じた内容を設定する
A
聴衆の理解レベルに応じた内容設定を行う
B
投影スクリーン上の資料は,聴衆が読み取り易い大きさと配色にする
などである.いずれも当然と思えるが,この当然のことを実行するのが意外と難しい.ここでは,学生諸君が経験するであろう卒論発表(口頭発表)を例に話を進める.
まず,@に関して言えば,卒論発表で与えられる時間は一般に質疑を含めて10〜15分程度である.一枚のスライドを説明するのに通常1分程度は必要であるから,与えられた時間(分)とほぼ同数のスライドで全体構成を行うことになる.卒論で得られた幾つかの知見に優先順位を付け,発表内容を絞り込むプロセスが必要となる.実はこのプロセスが大変重要であり,卒論研究の全体像を再認識する絶好の機会となる場合が多い.
続いて,Aに関する具体的な事項として,用語の問題がある.卒論研究に関わる様々な専門用語は,発表者自らは慣れ親しんでいても,下級生や専門外の教員にとっては未知の場合が少なくない.自分の使う用語がどの程度一般的なのかを認識し,聴衆のレベルに合わせて用語説明を行うなど,工夫が必要となる.また,発表内容で難解な部分は,模式図やイラストを駆使し,聴衆の理解を助ける必要がある.時にはユーモラスなイラストを用いて聴衆の注意を集めるなどの余裕も欲しい.
Bは最も基本的な注意事項である.なぜなら,スクリーン上の資料が読み取れない場合,聴衆は一気に関心を失う場合が多いためである.初めて
PowerPoint を使うとき,予めセットされた活字の大きさ(ポイント)に注意して欲しい.大見出しは44ポイント,中見出しは32ポイント,箇条書き部分は28ポイントとかなり大きな文字を使っている.どの程度の大きさの文字を使うかは,発表会場やスクリーンの大きさと関係するが,一般に24ポイント以下では不適切と考えて良い.特に図表をスライドに挿入した最,図表中の文字の大きさに注意する必要がある.一方,配色も重要であり,スライドの見易さを左右する.一般にOHPシートでは,背景を無色または明るい色調にすると見易く,液晶プロジェクターによるオン・スクリーン・プレゼンテーションでは,暗目の背景が見易い.配色を含めたスライドのデザインは,慣れるにつれ自分なりのフォームが出来上がるが,最初のうちは後述する標準レイアウトを活用すると良い.また,スライド背景のデザインもテンプレートを活用し,様々なデザインを試してみると良い.
以上の事項はプレゼンテーションの資料作成上の注意であるが,上手な発表を行うには説明の仕方にも工夫が求められる.話がスムースに進むように原稿を用意する場合もあるが,それを棒読みするのは感心できない.発表時点までに話の流れとキーポイントを頭に叩き込んでおく訓練が必要である.発表時には常に聴衆の反応を観察し,聴衆が理解し易いスピードで話すなど,余裕をもったプレゼンテーションに心がける. PowerPoint には,それらを支援する様々な機能が備わっている.たとえば,各スライド作成時に発表のキーポイントをノートしておく機能がある.全スライドを作り上げるまで,何度となくスライドの修正が必要となり,それに応じてノートも修正される.そのプロセスを通じて一連のノートが完成され,頭の中で全体イメージとキーポイントが把握できるようになる.ここまで来れば,わざわざ発表原稿を作り直して暗記することは不必要であろう.さらにスライドがほぼ完成したらスライドショーを実行して発表練習を行う.リハーサル機能を用いれば,各スライドの説明に要した時間や全体時間が計測できる.本番さながらに声を出して練習し,与えられた時間内で発表できるように最終調整を行う.
2.4.3 PowerPoint の操作方法
(1) 基本画面
PowerPoint を起動させると,図○○のような基本画面(標準表示モード)が現れる.表示画面は3分割されており,右上の大きな画像を「スライドペイン」と呼ぶ.この画像はこれから作成していくスライドのイメージ画面となり,テキスト,図形,装飾など,大部分の作業を進める場所となる.次に,画面左の縦長の画像は「アウトラインペイン」と呼ばれ,作成した全スライドがテキストで表示される.本の目次に相当するが,この場所でスライドの順序の変更や追加,削除などを行う.また,テキストの編集作業も行える.一方,スライドペインの下に位置する枠は「ノートペイン」と呼ばれ,スライド説明に必要な事項を記入しておく.ただし,入力したテキストはスライドショーでは表示されないため,プリンタで印刷して発表練習に役立てる.
図○○ PowerPoint の基本画面
アウトラインペインの直下に表示モードの選択ボタンがある.モードは以下の5種類で,それぞれ次のような特徴を持つ.
「標準表示モード」:プレゼンテーションを作成する上で最も作業がしやすい.
「アウトライン表示モード」:アウトラインペインが大きく表示され,テキストの編集に便利.
「スライド表示モード」:スライドペインが大きく表示され,スライドの編集に便利.
「スライド一覧表示モード」:全スライドが表示され,プレゼンテーション全体のイメージが把握できる.
「スライドショーモード」:画面全体を使って,プレゼンテーション本番のようにスライドが表示される.
図○○ 「新規作成」画面の1ページ目
図○○ 「新しいスライド」の「標準レイアウト」
(2)プレゼンテーション作成方法の選択
新しいプレゼンテーションを作成する場合、いくつかの方法がある。 PowerPoint を起動して「ファイル」→「新規作成」を選択すると,図○○に示す画面が表示される.この画面(1ページ目「標準」)では,「新しいプレゼンテーション」または「インスタントウィザード」が選択できる.「新しいプレゼンテーション」をクリックすると,スライドのレイアウトを決めるウィンドウが表示されるが,通常は1枚目に作成するスライドのレイアウトを選択する.28種類のレイアウトが用意されており,これらを活用することで図表入りのスライドが簡単に作成できる.もちろん白紙のレイアウトを選択すれば,自由な形式のスライドが作成できる.これらの操作方法は次項で説明する.
一方,インスタントウィザードを選択すると図○○のような画面が現れる.インスタントウィザードは,プレゼンテーションとして準備された24種類のサンプル(図○○参照)に対して,対話形式で各種設定を行う機能である.設定が完了すると,発表タイトルなどの情報が入力されたサンプル画面に移り,画面情報を加工しながらプレゼンテーションの作成作業を進めることができる.ただし,準備されたサンプルは企業向けの内容が多く,学生諸君に直接役立つサンプルは余り多くない.しかし,説明事項の要点やプレゼンテーションの秘訣などが随所に現れているので,一度じっくりと観察して欲しい.
さらに,既存のプレゼンテーションを開き,変更を加えることで新しいプレゼンテーションの作成作業を進めることもしばしば行われる.また、デザインテンプレートを使ったプレゼンテーション作成もよく行われる.デザインテンプレートはプレゼンテーションのデザインを決めるもので、スライド背景の一種と考えてもよい.図○○にテンプレートの一例を示すが,「新規作成」画面の2ページ目に約50種類のリストが掲載されている.適切なテンプレートの選択はプレゼンテーションの演出効果に役立つ.ただし,プレゼンテーション全体のデザインであるため,一つのファイルに複数のテンプレートは選択できない.また,デザインテンプレートはスライド作成前に設定する必要はなく,作成後に配色などを考慮した上で,「書式」→「デザインテンプレートの適用」を選択しても設定できる.さらに,特定のスライドのみ背景グラフィックスを消去したいときは,「書式」→「背景」を選び「マスタ上のグラフィックスを非表示にする」をオンにすればよい.
図○○ インスタントウィザード
図○○ 「新規作成」で用意されたプレゼンテーションのサンプル
図○○ デザインテンプレートを適用したスライド作成
(3)プレゼンテーションの作成手順
PowerPoint を起動して「新しいプレゼンテーションの作成」をクリックすると,「新しいスライド」の選択画面となる.いま,スライド1枚目のレイアウトとして「タイトルスライド」を選択してみる.図○○はテキスト入力および配色設定後の例である.通常,スライド1枚目では発表タイトルをタイトルテキストボックスに,発表者の所属や氏名をサブタイトルテキストボックスに入力する.必要に応じて文字の大きさ,フォント,テキストボックスの位置などの変更を行う.文字入力すると,左側のアウトラインペインに入力テキストが表示され,アウトラインペインでの文字修正や加筆が可能となる.ただし,白紙のレイアウトを選択した場合,テキストボックスを追加して文字入力してもアウトラインペインに情報は何も入らない.さて,配色は「書式」→「スライドの配色」→「標準」で選択したが,ユーザー設定で好みの配色に仕上げることもできる.配色は,テキストや図表に対する色の組み合わせパターンであり,スライドの見易さを左右する重要な因子である.標準配色はそれらが考慮されているので安心して使える.一方,背景色のみを設定したいときは,「書式」→「背景」で色を決定する.
続いて,2枚目のスライド作成に移る.「挿入」→「新しいスライド」をクリックすると,再びレイアウト選択のウィンドウが現れる.今度は標準レイアウト2番目の「箇条書きテキスト」を選択し,発表内容を知らせるスライドを作成してみる.図○○はテキスト入力後の例で,配色も一枚目と統一してある.同様の手順により,3枚目以降のスライド作成を進めていけばよい.
図○○ スライド1枚目の例(レイアウトは「タイトルスライド」を選択)
図○○ スライド2枚目の例(レイアウトは「箇条書きタイトル」を選択)
(4)
標準レイアウトの活用例
上の例では,テキスト主体の標準レイアウトを示した.今度は,図表などが簡単に作成できる他のレイアウトの利用してみる.はじめに,簡単な表の作成方法を示す.「挿入」→「新しいスライド」でレイアウト選択画面が出たら,「表」を選択する.すると,タイトルと表のボックスからなるスライドが現れるので,表をダブルクリックする.表の行数と列数を入力すれば図○○のような画面となり,表の各セルに入力可能となる.罫線を移動する時は,マウスのポインタを合わせてドラッグすればよい.
図○○ 標準レイアウト「表」による簡易表作成
図○○ オブジェクト選択された「組織図」作成ウィンドウ
次に,フローチャートなどに応用できる標準レイアウトとして,「組織図」を選択してみよう.組織図レイアウトのスライドが現れたら,ダブルクリックして組織図を追加する.すると,図○○に示すウィンドウが現れる.図中のテキストボックスは任意の位置で追加や削除が可能であり,本来の組織図としての利用はもちろん,実験方法や調査方法などのフローチャート作成にも応用できる.
続いて,簡単なグラフ作成を紹介する.「新しいスライド」で標準レイアウトの「グラフ」を選択し,グラフの部分をダブルクリックする.すると,グラフのサンプルおよびデータシートのウィンドウが現れる.作成したいグラフのデータをシートのセルに入力(既存のデータに上書き変更または追加)すれば,グラフが変更される.図○○はその一例である.一方,グラフの種類を変更したいときは,グラフエリアにポインタを移して右クリックする.そして,「グラフの種類」を選択し,目的に合ったグラフを選べばよい.また同様にして「グラフオプション」を選択すれば,軸のタイトルや目盛線,凡例などの追加や変更が行える.
図や表を中心としたスライドでは,ノートペインに説明の要点を記入しておく.スライド作成の段階では,説明すべき順番に説明内容のキーワードをノートすれば充分である.
図○○ 標準レイアウト「グラフ」による簡易グラフ作成
最後に,スライドへのオブジェクト挿入の例を紹介する.標準レイアウトには「オブジェクト」を含んだ幾つかのレイアウトがあり,既に紹介した「組織図」もオブジェクトの一つである.いま,オブジェクトを含む標準レイアウトのいずれかを選び,オブジェクトをダブルクリックすると,図○○に示す選択画面が現れる.ここでは,数式エディタを選択してみる.すると,エディタ画面が現れるので,図○○のように適当な式を作成し,「ファイル」→「終了して・・戻る」を選択すれば,スライドに作成したオブジェクトが挿入される.続いて,オブジェクトを右クリックして「オブジェクトの書式設定」を開き,大きさや色などを調整すればよい.
図○○ オブジェクト選択のウィンドウ
図○○ 選択された数式エディタのウィンドウ
以上,標準レイアウトの使用例を紹介してきたが,スライド作成に慣れてくるとデザインの自由度の点から「白紙」のレイアウトの方が便利なこともある.白紙の場合,文字はテキストボックスを用いて書き,見易い大きさの文字となるように注意する.模式図を描きたい時は「挿入」→「図」で「オートシェイプ」を起動して描画する.同様に,「挿入」→「図」でクリップアートや写真ファイルなどを選択すれば,それらをスライドに挿入できる.また,エクセルやワードを起動しておき,クリップボードに必要な図表を複写してスライドに挿入することも頻繁に行われる.
(5) スライドショーによる発表練習とアニメーションによる演出効果
一連のスライドが概ね完成したら,画面表示をスライド一覧モードに切り替え,プレゼンテーション全体のイメージを把握する.スライド枚数が多い場合,ある程度の枚数を書いた時点でこの操作を行うと良い.大切なのは全体イメージを掴みながら個々のスライドの位置付けを考える点にある.その過程では,スライドの順番を入れ替えたり,2枚のスライドを1枚に書き換えるなどの操作が伴うであろう.
全体イメージが固まってきたら,ノートを修正していく.テキスト主体のスライドではノート不要の場合も多いが,強調すべきポイントがあれば,ノートしておく.一方,図表や写真の場合,適切なノート作成は極めて重要である.スムースな説明ができるように,話しのポイントとその順番を再確認してノート作成を行う.これらのノートはスライドショーでは表示されないため,予めプリンタで印刷しておく.その手順は,「ファイル」→「印刷」で,印刷対象に「ノート」を選択すればよい.
ここまで準備が整ったら,いよいよスライドショーによる発表練習に移る.まずは,「スライドショー」→「実行」をクリックしてみる.スライド1枚目が全画面に表示されるが,エンターキー,スペースキー,カーソルキー(↓,→)を押すか,マウスを左クリックすれば次のスライドに移る.前のスライドに戻るにはカーソルキー(↑,←)を押す.印刷したノートを手元におき,プレゼンテーションの全体イメージを脳裏に焼き付けよう.
次は発表時間を考慮したリハーサルを行う.「スライドショー」→「リハーサル」をクリックすると,ストップウォッチが作動したスライドショーが開始されので,実際に声を出して練習してみる.練習を重ねても制限時間をオーバーする場合は,内容の再構成を検討した方が近道となる.
最後に,演出効果を高めるアニメーション機能を紹介する.アニメーションを付けたいスライドを表示しておき,「スライドショー」→「アニメーションの設定」をクリックすると,図○○のような設定画面が表示される.ここでは,図○○で作成したテキスト4項目に対してアニメーションを設定しており,クリックする毎に1項目ずつ左からスライドインする設定である.
図○○ アニメーションの設定画面
2.5 データベース(Windows)
2.6 データベース(Macintosh)