温度ストレス条件下における植物の成長と分化に関する分子および細胞メカニズム

現在、人口増加と食糧生産のバランスは非常に厳しくなっている。2050年までに、世界の人口は約34%増加し91億人になるが、潜在的な耕作可能面積はわずか約5%しか増加しない (FAO; www. fao.org) さらに、作物の生産は温度ストレスを含む様々な非生物的ストレスによって、より困難になる。 例えば低温ストレスは、2009年度日本で1580 億円もの被害をもたらしたことが報告されている(Rahman, 2012, Ashraf and Rahman, 2018)。また、地球温暖化が進行するなか、高温ストレスが作物の収量に与える影響は深刻で、被害額は世界中で毎年5 億円ずつ増加している(Lobell and Field, 2007)。現在の気候条件の変化に伴い、温度ストレスは今後の作物生産に大きな影響を及ぼす。 私達の研究は、温度ストレスに耐えられる植物を作出するために、遺伝的なアプローチを用いて、植物の温度ストレス調節経路の分子機構を解明することを目的としている。

除草剤作用の分子メカニズム

http://news7a1.atm.iwate-u.ac.jp/~abidur/actin%20pic.jpg除草剤の使用は農業の不可欠な部分であり、現在の世界の除草剤の市場シェアは480億ドルだ。日本の農業でも大量の除草剤を使用しており、その市場規模は9,200億円である。この大量の除草剤の使用は環境バランスに影響を与えている。

入手可能な除草剤の中で、オーキシン除草剤は農業分野で最も広く使用されている除草剤である。これらの除草剤は双子葉植物だけを枯死させ、単子葉植物が枯死させない選択性を持っている。しかしながら、これらの除草剤の選択性の分子メカニズムは未だ解明されてない。

我々の研究室では、これらの除草剤の分子標的としてアクチンを同定した 。双子葉植物では2,4-D, ディカンバとピクロラム除草剤はアクチンを分解しますが、天然のオーキシンIAAはわずかにそれを束ねまる (Rahman et al., 2006; Nakasone et al., 2012; Takahashi et al., 2018, unpublished data)

私たちの研究室では、この現象に特異的に関連している分子調節物質を見つけることに焦点を合わせている。このプロセスを調節する遺伝子を見つけることはより効率性に富んだ除草剤を作るのことの助けになり、農業分野での除草剤の使用を減らし、農業の実践をより環境にやさしくすると考えている。

ファイトレメディエーションを促進するための新しい金属トランスポーターの解明

カドミウム、セシウム、ヒ素などのさまざまな金属による土壌汚染は、安全な作物生産にとって大きな問題です。このような土壌汚染を解消するための賢く、環境に優しく、低コストな技術こそがファイトレメディエーションである。ファイトレメディエーション技術の成功は、土壌から植物への金属の輸送に大きく依存する。したがって、特定の金属に対する新しい特定の輸送体を見つけることは重要な課題である。当研究室ではセシウム、カドミウム、ヒ素の新しい取り込み輸送体の同定に焦点を当てている。最近我々は2つの新しいセシウム取り込みトランスポーターを同定した。次のステップでは、これらの取り込み輸送体を過剰発現または変異させる新しいトランスジェニック植物を作り、それを土壌の浄化を促し金属汚染物質を取り込まない作物を作ることを考えている。