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研究背景
 植物は、自然環境の中で様々なストレスにさらされています。それらは温度や湿度、光や土壌成分、水分条件など多岐にわたり、植物はそれらの影響を様々な時間単位で受けています。これらのストレスは植物の生存を常に脅かしていますが、植物もまたこれらのストレスを感知・伝達し、それらのストレスに対して応答・適応する機構をその長い歴史の中で得てきました。
 
 それらのストレスの中でも、本研究分野では特に低温について扱っています。岩手県盛岡市では、冬季には平均気温はゆうに氷点下を下回り、この地に住む野生植物に対して多大な影響を及ぼしています。

 また、さまざまな農学的技術が発達し、高度化した今日においても、我々人類が営む農業は低温によっておおきく左右されます。この東北の地においても、たびたび起こる冷害は、その都度深刻な悪影響を及ぼし、これは安定的な農業を営む上でいまだ解決されていない大きな問題の一つとして立ちはだかっています。

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 本研究分野では、多くの植物が持つ低温馴化機構の解明を大きなテーマとして掲げています。この低温馴化機構は、植物が環境的変化を感知して、低温耐性(凍結耐性)を増大させる機構であり、植物が寒さをしのぐための重要なメカニズムの一つとなっています。

 我々はこの低温馴化機構を、転写因子を介した遺伝子的変化、適合溶質による細胞内浸透圧濃度の変化や細胞内構造物の保護活性、細胞膜の脂質やタンパク質の組成変化による細胞膜の流動性への影響、凍結障害に対するカルシウム依存的な細胞膜修復機構などに着目して研究しています
研究内容
 これらの問題を解決し、果ては食糧増産、人口増大への対処を目的としていく上では、植物の持つ既存の低温(凍結)耐性獲得機構を理解し、それらを応用していくことが重要と考えられます。

 その前提として、低温の認識から、適切な場所・領域へのシグナル伝達、それを受けての種々の生理学的・形態学的変化、続いて起こるストレス応答機構の発現、そして最終的に低温耐性(凍結耐性)の獲得と、非常に複合的で複雑なメカニズムを理解する必要があります。