森林資源化学研究室

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研究テーマ




針葉樹テルペノイド成分の利用に関する研究


 針葉樹の樹皮や間伐材は、これまで活用されることなく焼却や林地残材と

して処分されてきました。近年では、エネルギーや農畜産業資材として用いら

れるようになってきていますが、付加価値の高い利用法とはなっていません。

これらの低位利用型の森林資源から有用な成分を取り出し、残った部分を木

質ペレットや各種資材等に用いることができれば、今まで以上に森林バイオ

マスを利活用することが可能になると思われます。

 これまでの研究では、スギ材および樹皮の抽出成分について幾つかの生理

機能を検討した結果、水蒸気蒸留物(精油)またはヘキサン抽出物として分離

されたテルペノイド成分が、いずれも植物病原性の糸状菌および感染症のグ

ラム陽性細菌に対して抗菌活性を有することが明らかにされています。さらに

スギ材精油成分が人間の精神活動に及ぼす影響や、スギ樹皮テルペノイドの

主要成分であるフェルギノールが有する抗酸化活性についての検討が進めら

れています。



縮合型タンニンの生分解に関する研究


 樹木の細胞壁成分は樹木が枯死した後に、森林内の微生物によって分解・

代謝され、再び炭酸ガスとして大気中に放出されます。このような森林の炭素

循環サイクルのなかでも天然の芳香族高分子化合物としてリグニンに次いで

多量に存在する縮合型タンニンは、樹皮特有の成分であったためにその成分

解機構については全くわかっていません。

 当研究室では、天然の縮合型タンニンに替えて放射性標識タンニンを合成

し、これを試料として各種木材腐朽菌による生分解実験を行うことにより、種

々の木材腐朽菌のなかから高い縮合型タンニン分解能力を持つ菌株の選抜

を試みました。その結果、数種の菌株が効率的に放射性標識タンニンを分解

代謝し、二酸化炭素として大気中に放出することが確認されました。これらの

菌株は今後の研究においても利用価値が高く、縮合型タンニンの生分解経路

や、それに関わる分解酵素の特定に役立つものと期待されています。