寒冷バイオシステム研究センター
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>年報 1998 (Vol.1)>I目次 | 巻頭言 | I | II | III | IV | VI | VII

I.寒冷バイオシステム研究センターの概要

1.沿革

 岩手大学農学部附属寒冷バイオシステム研究センターは、昭和63年4月から10年間存続した細胞育種実験施設が平成10年3月末日で時限を迎えたのに伴い、同年4 月9日に組織・スタッフが約3倍に拡大(3つの研究分野から構成)されて設置されました。旧細胞育種実験施設と同様に10年時限の研究施設で、平成20年3月に時限 となります。

 岩手大学農学部では、旧細胞育種実験施設の時限到来を前に、平成7年に各学科・附属施設の代表からなる「細胞育種実験施設見直し検討委員会」を組織するとともに、 学外の有識者(国公立研究機関8名および民間産業界4名)にそれまでの細胞育種実験施設の研究活動・成果や組織・運営に対する評価をお願いしました。その評価結果( 細胞育種実験施設 現状と展望 ―外部評価と自己点検―、として平成8年9月に公開)や農学部の将来構想等を踏まえて、時限後の細胞育種実験施設の在り方を慎重に検 討しました。その結果生まれた構想が「寒冷バイオシステム研究センター」です。

2.目的

 寒冷バイオシステム研究センターは旧細胞育種実験施設での研究成果を基に、新しい学問領域の発展と、冷害など地域の農業の現状や産業を視点に入れた社会的要請に応 えるため、

「生物の寒冷に関わる現象を解明し、その成果を有用生物の育種に応用する」

ことを目的として設置されたユニークな研究センターです。
 前身である細胞育種実験施設では、細胞の中で遺伝子がいろいろな働きをするメカニズムを解明し、その成果を育種技術に応用することを目指して基礎研究を行なって来 ました。
 そのなかで、
 ◎遺伝子が特別な場所(細胞・組織)で働く仕組みやタンパク質生合成の仕組み
 ◎細胞分裂で遺伝子が2つにコピーされる仕組み
 ◎イネの葯でのみ働かせることが出来る人工遺伝子
等に関して多くの成果が得られ、外部評価でも高い評価をうけております。これらの研究の一部は外部環境(寒冷)との関わりに視点をおいて現在も継続されています。
 このような細胞育種実験施設での研究実績と技術的基盤を引き継ぎ、社会的にも学問領域の上でも重要になっている「寒冷生物学をめぐる総合的研究」をより発展させる ため、寒冷バイオシステム研究センターでは以下の課題を中心に研究を推進し、得られた成果を農業生物の遺伝的改良(育種)に応用することを目指しています。
 ◎寒冷環境に生物が応答するシステムの解明(ここでは、冷害などで農業生物に影響を
  あたえる15℃前後から凍結傷害を与える氷点下までを対象温度としています)
 ◎生物が寒冷環境を利用したり防御するシステムの解明
 ◎寒冷環境により生物が傷害を受けるメカニズムおよびその回避のメカニズムの解明
 ◎寒冷地生物の未利用遺伝子資源の探索と有効利用

 このような目的で設置された研究センターは国内では初めてであり、世界的にみてもあまり例がありません。低温に関する研究施設としては従来から北海道大学低温科学 研究所があり、研究活動を積極的に展開して「低温に関する科学」に大きな貢献をしていますが、そこでは研究対象を特に生物のみに絞っていないことなど、設置目標や性 格が本研究センターとは異なっています。

 現在、地球レベルの問題の中に、食糧問題や環境問題があります。農業生物の寒冷地適応型への遺伝的改変や、寒冷地生物のもつ未開拓の機能や素材の探索・開発を目指 す寒冷バイオシステムの研究は、地球の限られた耕地や資源を利用する中で、我々の豊かな食、住や環境を保障するために重要であり、今後益々発展するものと思われます。

3.将来構想

 上に述べた学問領域を専門とする研究センターは、国内では寒冷バイオシステム研究センターが初めてであることから、将来、これを「寒冷環境下での生物の機能・行動 ・生産及び生態」に関する総合研究センターとしてさらに充実させ、国内・外の研究者や研究機関との研究ネットワークの拠点へと発展させたいと考えています。
 現在、当研究センターでは3研究分野の研究の他に、農学部や他の学部、学外国公立研究機関及び民間、地方自治体と多くの共同研究を行なっています。これらの研究は、 将来大きな成果が期待されるだけでなく、上述の拠点づくりの「芽」になることが期待されています。
 この構想の実現のためには、全学及び学外の研究者が自由に共同利用でき、かつ、本研究分野の研究者・技術者の養成のため多くの学生(学部、修士及び博士課程)を受 け入れて教育出来る研究・教育体制と設備・施設を充実することが重要と考えています。

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