寒冷バイオシステム研究センター
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>年報 2003 (Vol.6)>V目次 | II | III | IV | V | VI | VII | VIII

V.共同研究、当研究センターを利用した研究および当研究センターが参加するプロジェクト研究

3.民間及び地方自治体

◇独立行政法人・農業生物資源研究所

遺伝資源研究グループ(石川 雅也 主任研究官)、生体機能開発研究分野(伊藤 菊一、上村 松生)
研究テーマ:遺伝子組換え技術を応用した次世代型植物の開発に関する研究「熱産生機能を付加した低温回避イネの開発」
 低温ストレス耐性作物の作出は、我が国の主要作物であるイネの冷害の克服をはじめ、地球レベルでの安定した食糧供給においても重要かつ緊急の課題である。本研究で は、ザゼンソウより得られた脱共役タンパク質(UCP)をコードする遺伝子を導入したイネを作出し、その熱産生機能等の諸性質を解析することを目的とする。これまでに、 SfUCPaおよびSfUCPbを導入したイネの作出に成功し、その形質の解析を継続している。


◇独立行政法人・農業生物資源研究所

ジーンバンク(新野 孝男 上席研究官)、生体機能開発研究分野(田中 大介、上村 松生)
研究テーマ:植物茎頂組織の超低温下における長期保存系の確立
 本研究は、植物茎頂組織を遺伝的変異なしに長期間安定した状態で保存する効率的なシステムの確立を目的としている。現在までに、イチゴ茎頂を用いて高生存率で保存 可能なシステムを開発し、実際に100系統を越えるイチゴ茎頂の保存を行った。本研究結果は、Plant Biotechnologyに論文として発表した。


◇(財)岩手生物工学研究センター

水稲優良品種開発プロジェクト(寺内 良平 主席研究員、清水 武史 研究員)、生体機能開発研究分野(上村 松生)
研究テーマ:いもち病菌エリシターによってリン酸化されるイネの新規タンパク質の探索
 私たちは、いもち病菌感染に応答するイネの信号伝達経路に関心をもって研究している。イネ懸濁培養細胞を[32P]正リン酸で標識した後にイネいもち病菌エ リシター処理を行い、抽出したタンパク質を二次元電気泳動で分離してオートラジオグラフィーを行った。その結果、エリシターに応答してリン酸化されるタンパク質スポ ットが幾つか検出された。現在、このタンパク質の詳細な解析を進めている。


4.受託研究

◇岩手県安代町

花き開発センター(日影 孝志 副所長)、細胞複製研究分野(牟田口 奈々、斎藤 靖史、堤 賢一)
研究テーマ:リンドウの薬効に関する研究
 リンドウの根は古くから漢方薬として利用されているが、どのような生理活性があるかはよくわかっていない。そこで、産業上リンドウの切り花の収穫が終了した大量の 根が利用できることからその利用を視野に入れた研究を行っている。


花き振興協議会(北舘 義一 会長)、生体機能開発研究分野(上村 松生)
研究テーマ:リンドウ遺伝資源の凍結保存に関する研究
 本研究は、岩手県安代町花き開発センターが所有するリンドウ育種母本や確立品種を超低温下で長期安定保存することを目的とした研究である。現在までに、10を越える 系統で保存に成功しており、今後も継続する予定となっている。研究の一部は、CryoLettersに論文として受理された。


5.プロジェクト研究

◇有用遺伝子活用のための植物(イネ)・動物ゲノム研究:イネ・ゲノムの有用遺伝子の単離及び機能解明

全体課題名:組換え体を用いた有用遺伝子の大規模機能解明と関連技術の開発
担当課題名:RNAiを用いた選択的mRNA分解による遺伝子機能解析
       斎藤 靖史(細胞複製研究分野)
協力分担:(独)農業技術研究機構・作物研究所稲研究部遺伝子技術研究室(若狭 暁 室長)
 イネゲノムの塩基配列解析が2002年にも完了する勢いで進められている。塩基配列情報から遺伝子のアミノ酸配列を推定することができるが、それだけで遺伝子機能を解 明するには限界があり、機能不明遺伝子の有効利用は難しい。
 本研究では、イネゲノムの成果で得られた有用遺伝子の機能解明を進めるため、ベクター開発や関連した基礎的データの蓄積を行って、RNAi技術を利用した効率的なイネ 遺伝子機能破壊法の開発と機能解析法としての適用を図る。


◇生物系特定産業技術研究支援センター:新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

研究テーマ:植物の耐寒性形質に関わる分子機能の複合的解析とその応用
        上村 松生(研究代表者、生体機能開発研究分野)、西田 生郎(東京大学大学院理学系研究科)、和田 元(東京大学大学院総合文化研究科)、石川 雅也 (独立法人農業生物資源研究所)、藤川 清三(北海道大学農学研究科)
担当課題:耐凍性増大の分子的メカニズムに関する研究:生体膜の安定性に注目して
 本プロジェクトは、現在までの研究では関係がやや疎遠であった耐寒性研究における分子生物学的アプローチと生理・生化学的アプローチを効率よく組み合わせて得られ た結果を高耐寒性(冷温耐性+低温生育能+凍結耐性)植物の開発に向けた基礎的データとして確立することを目的に開始された。具体的には、(1)遺伝子を強制発現させる アクティーベーション・タギング法により、耐寒性を持たない植物にも応用可能な新しい耐寒性関与遺伝子を探索する、(2)耐寒性の程度や様式の異なる様々な植物を用い、 耐寒性に関わる物質の分子作用機構を単離細胞やモデル系を用いて解析すると同時に、耐寒性に関与する物質をコードする遺伝子の単離・解析を行う、及び、(3)以上の研 究により得られた耐寒性関与遺伝子やその調節因子をコードした遺伝子を導入した形質転換体を作成し、個々の遺伝子の耐寒性機構への関与を解析する、ことを行っている。 本年度は最終年度となり、いくつかの新規の知見を得ると共に、高耐寒性植物作成のための分子育種論構築に向けた最終的努力を続けている。


◇生物系特定産業技術研究支援センター:新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

研究テーマ:ザゼンソウを模倣した温度制御アルゴリズムの解析とその生物系発熱制御デバイスへの応用
        伊藤 菊一(研究代表者、生体機能開発研究分野)
 本研究は、ザゼンソウの温度制御に関わるメカニズムの解明と発熱制御システムへの応用を目的として、平成13年10月から開始したプロジェクトである。平成14年4月か ら2名の博士研究員が加わり、フィールド調査に基づく遺伝子探索、計算機実験、および、分子生物学的実験といった異分野の研究手法を統合した研究が進展している。今 年は、ザゼンソウを含む各種発熱植物の発熱関連遺伝子の解析を進めるとともに、独創的カオス解析手法の適用により、ザゼンソウにおける発熱制御アルゴリズムの概要を ほぼ明らかにすることができた。さらに、ザゼンソウ型温度制御アルゴリズムにより作動する制御ユニットの試作を行い、その性能が従来型のPID制御方式を凌ぐ能力を持 つことを明らかにした。現在、得られた制御アルゴリズムから予想される生物側因子の検索・同定に関する研究を精力的に進めている。なお、本年は研究プロジェクトの中 間評価が行われ、5段階評価の4という高い評価を得ている。

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