寒冷バイオシステム研究センター
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>年報 2001 (Vol.4)>V目次 | II | III | IV | V | VII | VIII | IX

V.共同研究、当研究センターを利用した研究および当研究センターが参加するプロジェクト研究

4.民間及び地方自治体

◇岩手県安代町

花き開発センター(日影孝志 副所長)
細胞複製研究分野(高橋美穂、斎藤靖史、堤 賢一)
研究テーマ:リンドウの育種および利用に関する研究
エゾリンドウ(Gentiana triflora)は多数の切花りんどう品種が育成されているが、そのF1親株の維持・増殖は、越冬芽形成が困難なためかなり工夫を要してきた。 また、栄養増殖(さし芽等)も同様の理由で実用技術になっていないのが現状である。そこで、私たちはリンドウの冷温による越冬芽形成のメカニズムの解明をリンドウの 育種上の重要なテーマと位置づけ研究している


◇(財)岩手生物工学研究センター

安全性評価技術開発プロジェクト(小岩弘之 主席研究員)
寒冷シグナル応答分野(保田 浩、末永佳代子、江尻愼一郎)
研究テーマ:植物細胞紡錘体に対する低温の影響
これまでの共同研究で、ペプチド鎖伸長因子1の各サブユニットがタバコBY-2細胞の細胞質アクチンフィラメントおよび紡錘体上に存在することを明らかにしてきたが、本 年度は、紡錘体上にアクチンフィラメントが存在することを、アクチン抗体の利用および細胞に対する低温の影響の解析から明確にした。すなわち、微小管およびアクチン フィラメントは、低温処理によりモノマーに崩壊することが知られていたので、一方のフィラメントを安定化する試薬の存在化に、両フィラメントの安定性を解析した。そ の結果、大変興味深いことに、アクチンフィラメントを安定化する試薬で微小管が安定化され、逆に、微小管を安定化する試薬が存在すると、低温下でアクチンフィラメン トが観察された。
 以上の結果は、アクチンフィラメントおよび微小管との間に両繊維を安定化する相互作用が存在することを示すものであり、紡錘体中にアクチンフィラメントが存在する ことを支持する重要な結果であると考えられる。本研究成果は小岩研究員の細胞化学領域の卓抜した技能と生物工学研究センターの高性能な共焦点レーザー顕微鏡び利用に より得られたものである。


5.受託研究

◇岩手県安代町

花き開発センター(日影孝志 副所長)
細胞複製研究分野(松川和重、斎藤靖史、堤 賢一)
研究テーマ:リンドウの薬効に関する研究
リンドウの根は古くから漢方薬として利用されているが、どのような生理活性があるかはよくわかっていない。そこで、産業上リンドウの切り花の収穫が終了した大量の根 が利用できることからその利用を視野に入れた研究を行っている。


6.プロジェクト研究

◇農水省「新産業創出フロンティア研究」

研究テーマ:植物の殺虫性環状ペプチド類の探索と利用技術の開発;殺虫性物質の合成関与遺伝子の単離および構造の解析
      (代表者 中国農業試験場 石本政男、研究分担者 寒冷シグナル応答分野 江尻愼一郎)
殺虫性環状ペプチドvignatic acid(VA)の生合成機構を明らかにすることを目的に、アズキゾウムシ抵抗性のリョクトウ野生種から、粗抽出液を調製し、ゲル濾過、ヒドロ キシアパタイトカラムクロマトグラフィー等で、VA合成酵素の部分精製を行い、機能の部分的な解析から、VAはペプチド抗生物質のように、protein templateにより合成さ れると推定した。また、抵抗性遺伝子と連関すると推定される他の遺伝子産物の機能の解析を行うためペプチド抗体を作成した。同遺伝子および同遺伝子断片の大腸菌での 発現を試みたが、全長の産物は、菌の生育に傷害を及ぼすためか殆ど発現しなかった。


◇生物系特定産業技術研究推進機構(生研機構):新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

全体課題名:植物の耐寒性形質に関わる分子機能の複合的解析とその応用
      上村松生(総括研究代表者、生体機能開発研究分野)、西田生郎(東京大学大学院助教授)、和田 元(九州大学大学院助教授)、石川雅也(農水省農業生物 資源研究所主任研究官)、伊藤菊一(生体機能開発研究分野)、藤川清三(北海道大学大学院教授)、荒川圭太(北海道大学低温科学研究所助手)、竹澤大輔(北海道大学 低温科学研究所助手)

担当課題名: 耐凍性増大の分子的メカニズムに関する基礎的研究−生体膜の安定性に注目して−
 本プロジェクトは、分子生物学的アプローチと生理・生化学的アプローチの有機的連携によって、高耐寒性植物を作出する際に広範囲にわたり応用可能な分子育種論を確 立するための基礎的な情報を得ることを目標としている。具体的には、・アクティベーション・タギング法を用いた新規耐寒性関連遺伝子群及びその調節因子の探索と同定、 ・耐寒性の程度や機構の異なる植物を用いた耐寒性獲得(低温馴化)分子機構の解析、・耐寒性獲得過程で起こる様々な物質変動及び低温誘導遺伝子群の機能評価、を行っ た上で、これらの研究成果を統合して、・耐寒性関与遺伝子群の耐凍性獲得機構における分子的関与をin vivo及びin vitroの両面から解析することを提案ている。現在ま でに、各々の研究項目で成果を上げており、今後は第2フェーズ(応用を視野に入れた)へと移行しつつある。


◇農水省21世紀グリーンフロンティア研究:イネ・ゲノムの有用遺伝子の単離及び機能解明

全体課題名:タンパク質の構造解析を利用した単離及び機能解明(イネプロテオーム)
      上村 松生、伊藤 菊一(生体機能開発研究分野)

担当課題名:イネ細胞膜タンパク質の網羅的解析と耐冷性に関連した有用遺伝子単離・機能解明
 本プロジェクトは、農水省が推進してきた「イネゲノムプロジェクト」で得られた情報の集約化と新たなる発展を期して開始されたものである。その趣旨は、「これまで、 DNAレベルの機能解析手法により有用遺伝子の単離及び機能解析を進めてきたところであるが、タンパク質レベルの機能解析手法はこれまで存在せず、学術的な研究にとど まっていた。しかし、最近タンパク質の立体構造解析及び機能解明に関する研究が進展しつつあることから、タンパク質レベルでの機能解析手法を新たに導入することによ り、従来のDNAレベルの機能解析手法では見つからない機能性物質生成関連遺伝子等の効率的な単離・機能解明と特許化を加速する」と記載されている。3つある研究項目 のうち我々のプロジェクトが所属する「タンパク質の構造解析を利用した単離及び機能解明」分野では、イネから分離・精製した時期特異的・組織特異的タンパク質の発現 状況や翻訳後修飾等を分析するとともに、構造決定を行い、そのcDNA塩基配列情報から遺伝子単離、そして、形質転換体によるその遺伝子の機能解析を行うことを、その具 体的内容としている。我々は、イネ幼葉の細胞膜に焦点を当て、そのタンパク質解析を行う予定である。


◇農水省イネ重点支援プロジェクト

研究テーマ:ザゼンソウ由来のucpのイネへの導入
      伊藤 菊一、上村 松生(生体機能開発研究分野)

 「やませ」に代表される低温によるイネの冷害は我が国の穀物生産において深刻な問題になっている。一方、早春に花を咲かせるザゼンソウは気温が氷点下にまで低下す る環境においても、発熱によりその花序を25℃程度に保つ能力を持つことから、ザゼンソウの持つ発熱関連遺伝子をイネに導入することにより、発熱により低温障害を回避 できる耐冷性イネの作出が期待される。本研究においては、ザゼンソウ由来の発熱関連遺伝子(ucp)をイネに導入し、低温回避型のイネの作出を試みている。


◇生物系特定産業技術研究推進機構(生研機構):新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業(若手研究支援型)

研究テーマ:ザゼンソウを模倣した温度制御アルゴリズムの開発とその生物系発熱制御デバイスへの応用 伊藤 菊一(研究代表者:生体機能開発研究分野)
研究概要:
ザゼンソウは早春に花を咲かせるサトイモ科の植物であり、その肉穂花序は雪を解かすほどの発熱能力を持つ。また、本植物の肉穂花序は氷点下を含む外気温度の変動に対 してもその体温を20℃程度に保つという特徴がある。従って、ザゼンソウは植物界ではユニークな「恒温植物」としての特性を持っているといえる。本プロジェクトでは、 発熱因子や温度センサーといったザゼンソウの恒温性を保障する因子を明らかにし、これらの因子を用いた新しい生物系発熱制御デバイスのデザインを行うことを目的とし ている。研究の手法としては、ザゼンソウの持つ温度制御システム全体の特性を明らかにするため、コンピューターシミュレーションを駆使したアルゴリズム解析を行い、 汎用されているPID制御方式との作動特性などの比較検討を行う。さらに、得られたアルゴリズムから抽出される温度制御に必要な因子群の検索・同定を行い、新規バイオ 発熱デバイスの構成因子とする。
このように、本プロジェクトは、従来植物研究にはほとんど用いられることのなかった計算機実験を駆使して、発熱現象というユニークな形質を分子生物学的に明らかにし ようとする点に特徴がある。発熱現象全体を制御するザゼンソウのアルゴリズムを理解することにより、ザゼンソウから得られた有用遺伝子の利活用の範囲も飛躍的に広が るものと予想される。

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