植物栄養生理学研究室
教官 (専門分野)
河合成直 教授 (植物栄養・肥料学 植物生理学)
基礎分析化学(一部分担) 共通教育科目 科学技術と現代社会 (一部分担) 水と環境 (一部分担) 岩手大学ミュージアム学 (一部分担)
生物圏化学特論 |
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水耕栽培した鉄欠オオムギ |
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メンバー
研究員 工藤洋晃(三陸復興支援事業・特任研究員)
大学院生 相羽健人 大沼 翔 佐藤史織 星 佳織 鎌田萌生 白木正俊 西舘真都香 波瀬山恵
学部学生 阿部純佳 笠嶋のな 柴崎宏仁 中村絵里
研究内容
植物の生理や物質の生合成・分泌機構、植物の養分吸収能を、主に化学的手法を用いて解明する。
植物を用いた環境修復、廃棄物を用いた新肥料、土壌改良資材の開発などの試み。
(1)イネ科植物の鉄栄養生理とムギネ酸の生合成経路
この研究は、1970年代、イネ科植物の鉄吸収が根より分泌されるムギネ酸類(mugineic acid family) と呼ばれる鉄運搬物質により行われることが本研究室の前教授である高城により発見されたことにより始められた。根圏の鉄は一日の時間のうち、午前中のみに分泌されるムギネ酸により可溶化される。 現在、イネ科植物の鉄欠乏耐性能の強さの順序は、根によるムギネ酸の分泌量の大小の順序と一致することが知られている。
また、これまでに、ムギネ酸類の分泌は温度の昇降により制御されていること、これら物質はアミノ酸の一種であるメチオニン3分子の連結により生合成されることなどが示されてきている。
現在、植物根と同程度の含量にまで、ムギネ酸を細胞内に蓄積し得るオオムギ由来の培養細胞が得られている。
ムギネ酸の構造式 ムギネ酸の発見者高城成一博士
(2)植物におけるヒ素過剰害と必須元素の栄養生理
植物において、有害元素であるヒ素がマンガン、銅、亜鉛、ニッケルなどの微量必須元素の吸収に対しどのような害作用をもたらすかについて研究している。 特に、ヒ素過剰が鉄の吸収移行を阻害するためヒ素過剰鉄クロロシスが引き起こされることが分かってきた。
(3)ナトリウム型塩類土壌におけるイネ科植物の鉄吸収能力
世界の耕地の約30%は塩類土壌であるといわれ、それら地域での植生の減退が問題となっている。イネ科植物における塩類耐性の機構の一つとして微量必須元素の高い吸収能力があると考えられる。その能力にムギネ酸がいかにかかわるかを研究している。
砂漠化が進む中国吉林省のNa型塩類地
中国吉林省の現地試験
(4)カンラン岩粉末(レルゾライト)の肥料・土壌改良資材としての有効利用
岩手県遠野市に産出するカンラン岩((株)宮守砕石 生産)はケイ酸マグネシウムを主成分とする火成岩である。これまで、建設資材などに利用されてきたが、農業においては十分に利用されていない。 当研究室では、この資材が農業に有益な材料となりうると考え、その有効利用の研究を行っている。これまでに、岩手県内の酸性土壌(六原土壌)において、その施用が植物生育を促進する効果を持つことが示されている。 また、カンラン岩粉末はカドミウムの吸収抑制能力があり、土壌に施用すると、植物のカドミウム吸収を抑制することが知られた。この資材を用いて新たな土壌改良資材の作成をめざし、研究中である。
岩手県遠野市カンラン岩採掘現場
カンラン岩粉末
(5) カドミウムの超集積植物ハクサンハタザオによるファイトレメディエーションの可能性
カドミウムの超集積植物と考えられる高山植物の一種ハクサンハタザオがどのような生理的特性を持っているかを研究している。この植物は水耕栽培においてmMにも達する高濃度のカドミウム過剰条件において生育でき、体内に多量のカドミウムを 集積する能力を持つ。これは、(株)フジタとの共同研究により進められている。生理的解明と農業現場における実用上の利用法など課題は多い。(ファイトレメディエーション:重金属など有害物質で汚染された土より、植物を用いてそれを吸収除去すること)
カドミウムを集積できる植物ハクサンハタザオ
(6)マンガン溶解活性物質
植物根よりマンガンを可溶化できる物質が分泌されると考えられる結果が得られている。これがムギネ酸と鉄の様な関係を持つか否かは不明であるが、現在のその単離精製を行っており、構造決定を目指している。
植物栄養生理学 河合成直 Tel. 019-621-6153