この事業について
野生動物との棲み分け、産業廃棄物問題、ペットとの共存。現代社会が直面するこれら問題の共通項は何でしょうか? その一つが「におい」です。畑に野生動物が嫌がるにおいを撒いておけば、食害を減らすことが可能になるかもしれません。現状では産廃として捨てられるスギ樹皮などから、消臭作用などを持つ新規におい物質を抽出できるかもしれません。ペットとペットの尿臭は切っても切り離せない悩みでしたが、尿臭を抑える方法を見つけることができるかもしれません。
「におい」は生物に対してさまざまな行動や生理的な反応を引き起こすことが知られていながら、それによって引き起こされる生物間コミュニケーションの全体像についてはほとんど解明されていません。この理由の一つとして、「におい」分子が極微量で生理活性を示すため、複雑なにおい成分中から活性のある分子を同定することが難しい、ということが挙げられます。つまり「におい」の研究を発展させるためには、様々な専門性を持つ研究者が集結して、「におい」分子の生理作用の解析から分離精製などの一連の研究を行うことが必要です。
本プロジェクトにおいては学部の枠を越えて研究拠点を形成し、「におい」の研究を推進することを目指しています。そして「におい」による心理的ストレスの緩和や、ペットとの共生など医療・福祉分野におけるライフイノベーションの展開、また本研究の成果を通じて優秀な人材の育成に寄与できると考えています。そして本プロジェクトにより、現代社会が抱える問題である動物との共存、生活の質(QOL)の向上、地域の活性化からなる持続的共生社会の形成への貢献が期待されています。