会長挨拶

日本家畜臨床学会
会長 松田 敬一

令和8年4月より日本家畜臨床学会の会長の任を拝命いたしました、岩手大学の松田敬一と申します。昨年度までは宮城県農業共済組合において臨床現場で働いていた一獣医師でございますので、前会長の佐藤繁先生をはじめ、偉大な先代会長の先生方と肩を並べることは到底かないません。しかし、私なりに出来ることから精一杯務めてまいりますので、会員の皆様には今後とも温かい御支援を賜りますようお願い申し上げます。

現在、日本の畜産は、飼養頭数の減少と高齢化、大規模化の進行、飼料価格の高騰、そして新興感染症や抗菌薬耐性への対応など、複雑で多面的な課題に直面しています。近年では国内でランピースキン病が発生し、さらにアフリカ豚熱の脅威が目前に迫るなど、家畜衛生を取り巻く環境は一層厳しさを増しています。加えて、アニマルウェルフェア、環境負荷低減、ワンヘルスといった社会的要請も高まり、臨床獣医師に求められる役割は大きく変化しています。

また、昨年度から農場管理認定獣医師認定制度が開始され、群全体を科学的に診る新たな専門性が社会的に注目されるようになりました。この制度は、臨床獣医師の役割が、従来の治療中心から、牛群の健康管理・繁殖管理・栄養管理・生産物の品質向上を統合した包括的な価値創出へと広がっていることを象徴しています。家畜流通の広域化や農場の大型化などにより感染症リスクが高まる現在、群単位での予防・モニタリング・早期対応の重要性はこれまで以上に高まっています。

このような現状の中、臨床現場の獣医師、大学の教員、研究者、行政関係者など、産業動物臨床に携わる多様な専門家が集い、知識と経験を共有できる場としての日本家畜臨床学会の存在は、かつてないほど重要性を増しています。本学会は、現場の課題を科学的に整理し、その解決を目指すとともに、次世代の臨床獣医師を育成するための学術的基盤と、人的交流を通じた支え合いの場を提供しています。今日の臨床獣医師には、科学的根拠に基づく診療、データ解析、コミュニケーション能力、経営視点、そして社会的説明責任が求められており、本学会が果たすべき役割はますます大きくなっています。

さらに、本学会が中心となって発行している学術誌「産業動物臨床医学雑誌」は、大動物臨床研究会様および九州沖縄産業動物臨床研究会様との共同刊行の形をとり、現在では1,000名を超える産業動物臨床に携わる獣医師の皆様に読んでいただいております。学術集会と並び、本学会の重要な活動の柱であり、今後は中国四国産業動物臨床研究会様をはじめ、多くの関係団体との連携を深めながら、学術的・臨床的価値のさらなる向上を図ってまいりたいと考えております。

産業動物臨床を取り巻く環境が大きく変化する今、本学会は学術と現場を結ぶ中核として、より確かな価値を生み出していくことが求められています。会員の皆様とともに、学術集会や学術誌を通じて産業動物臨床の未来を支える基盤を一層強固なものとし、持続可能な畜産の発展に寄与できるよう尽力してまいります。学会活動の充実には、会員の皆様からのより一層の御理解と御協力が不可欠でございます。何卒よろしくお願い申し上げます。

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