一本桜
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リンドウの耐寒性、休眠、系統分類・進化に関する研究

リンドウ  切り花として生産されるエゾリンドウ(Gentiana triflora)多年生植物である。エゾリンドウは根の上部に越冬芽を形成して、それが休眠、越冬し、春に発芽して夏から秋にかけて開花する。従って、生産現場では、越冬芽の形成や休眠および越冬性・耐寒性は重要な形成の1つであり、また育種選抜上重要な形質である。本研究ではこのようなリンドウ越冬芽の耐寒性や休眠のメカニズムを解明し、それに関与する遺伝子・タンパク質を指標として育種選抜技術の開発をめざしている。
 これまでの研究で、リンドウのプロテオーム解析を行い、越冬芽で特に多く発現しているタンパク質を10数種類道程している[Takahashi et al. (2006) Breeding Sci. 56, 39-46.]。これらのなかで、シロイヌナズナでオーキシン(IAA)の制御に関与すると報告されたエステラーゼのリンドウオルソログ(W14/15と名付けた)に特に注目し解析を行っている。IAAやABA等の植物ホルモンは耐寒性や休眠に関与することが知られ、これらの制御にW14/15が関与すると考えられるからである[Hikage et al. (2007) Mol. genet. Genomics 278, 95-104.]。
 W14/15遺伝子には多型が存在し、10種類以上のハプロタイプを明らかにした。この結果は、この遺伝子が種々の形質や分類学上の有用なマーカーとなり得ることを示した。実際、リンドウの種々の系統・品種や本研究のために作成した交配種の越冬性と遺伝子型の解析から、越冬性(耐寒性)に関わる、あるいは越冬性のマーカーとなるW14/15ハプロタイプを同定した。この結果は、実用的な利用も可能なものである[Hikage et al. (2011) Mol. Genet. Genomics 285, 47-56.]。さらに、上記のW14/15遺伝子を用いたリンドウ属植物の分子進化学的解析も進め、種に特異的なハプロタイプが存在することを明らかにし、W14/15遺伝子型が節(section)および種(species)の分類基準となり得ることが判明した。リンドウの日本在来種は種々報告されているが、それら分類基準は曖昧な点が少なくない。本研究をリンドウの正確な分類や系統進化に貢献させたいと考えている。


イネ胚乳形成初期における細胞増殖制御の温度感受性

イネ胚乳  イネの胚乳発達は温度による影響を受けやすい。低温では胚乳発達初期の胚乳核増殖が遅れ、高温では、速度が向上するが、趣旨の品質が低下する。よって、寒冷による米生産料の現象、温暖化による米の品質低下などが問題となる。このような機構変動に対して安定した米の生産量、品質を維持するためにイネは移入発達のメカニズムの解明は重要である。
 イネ胚乳核は受精直後から活発に増殖するが、細胞質分裂がおこらないためシンシチウム(多核体)が形成される。その後、細胞化が起こり、胚乳は単核の細胞の集合体となる。胚乳核の増殖速度は一定なので、シンシチウムを形成している時期の長さが胚乳、趣旨サイズを決定づけると考えられる。本研究では、細胞周期進行のブレーキの役割を果たすCKI(cyclin-dependent kinase inhibitor)の1つOrysa;KRP3がシンシチウムを形成している時期の胚乳で特異的に発現することを発見し、その成果を発表した(Mizutani et al. (2010) J. Exp. Bot. 61, 791-798.)。さらに、イネ胚乳特異的に発現する遺伝子の検索を行い、F-box遺伝子2種(ESOFB)、Subtilisin-like protease遺伝子2種が同定され、現在これらの遺伝子について解析を続けている。ESOFBの1種は、Orysa;KRP3の分解に関わることがわかりつつある。Subtilisin-like proteaseは植物において多数の遺伝子属を形成し、気孔発達、趣旨初が、メリステム維持、増殖因子のプロセッシング、ストレス応答等に関わる機能をもつものがわかってきたが、大多数の遺伝子機能は不明である。これらの知見を参考にし、イネSubtilisin-like protease遺伝子の機能と胚乳発達初期気孔の解明をめざしている。また、開花後の低温により、胚乳発達がシンシチウム形跡で停止し、開花後の高温は胚乳発達過程を促進することがわかり、細胞化過程前後の温度感受性について解析している。


リンドウ根の薬理作用

リンドウ根  本研究は岩手県安代町(現八幡平市)からの受託研究として本研究センター設置以前にスタートしたものである。本研究でリンドウ根にがん細胞増殖阻害、細胞死誘導物質があることを明らかにした[Matsukawa et al. (2006) Biosci. Biotechnol. Biochem. 70, 1046-1048.]。その後、この細胞死が典型的なアポトーシスではなく、ミトコンドリア機能(酸化的リン酸化)に依存したものであること、したがってミトコンドリア機能の異なるがん細胞に対しては細胞死誘導活性が異なり。感受性の高いがん細胞と低いがん細胞があることなどを明らかにした[Ogata et al. (2011) Adv. Biol. Chem. 1, 49-57.]。この成果は八幡平市と岩手大学との共同出願で特許を取得し、地域貢献の役割を果たすことができた(特許証第4979053号)。


環境変動条件下におけるRNAi機構の機能解析

tasiRNA  一定の環境条件下で栽培される実験用植物とは異なり、野外で生育する植物は検鏡変動に曝される。各種ストレスに応答した転写因子に関する卓越した研究のほか、small RNAを介した遺伝子発現制御も注目される。我々は、trans-acting siRNA (tasiRNA)の環境変動条件下における機能解析をめざした研究を行った。TAS1 tasiRNA量が低温において減少し、これによってターゲットmRNAの分解が低温により減少することが、低温におけるターゲット遺伝子の発現上昇を引き起こすことを報告した[Kume,K. et al. (2010) Biosci. Biotechnol. Biochem,. 74, 1435-1440.]。また、tasiRNAターゲットとして花粉および花粉管での発現特異性の高いCysteine-rich Receptor-like Kinaseの1つを同定し、今後そのtasiRNAを介した低温発現誘導と花粉形成に関わる機能について解析したいと考えている。


シロツメクサ多葉性発生機構の解析

クローバー  クローバー(シロツメクサ, Trifolium repens L.)は、通常、小葉数が3枚である(3つ葉)。しかし小葉数が4枚である4つ葉のクローバーが希に出現することも広く知られており、古来より世界各地において幸運の象徴であるとされ、縁起物としての価値を有している。さらに4つ葉以上の多葉も出現することが報告されており、岩手県で発見された56つ葉のクローバーはギネス記録を樹立している。これまで、多葉性の発生は環境要因や遺伝的要因による可能性が示唆されているが、具体的にどの部位においてどのような遺伝子が作用しているのかは未だに不明の点が多い。そこで我々は、クローバー多葉性発現についての遺伝子レベルでの解明を目指し研究を開始した。現在、複葉形成に関わる遺伝子のクローニングに成功し、小葉数の異なる株間でいくつかの多型が存在することがわかってきたところである。


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