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III.平成17年の研究活動と研究成果

1.細胞複製研究分野(堤 賢一、斎藤 靖史)

研究テーマ
 (1)染色体遺伝子の複製とゲノムの分配に関わる研究
 (2)リンドウ越冬芽の形成、寒冷耐性、休眠の機構
 (3)リンドウの生理活性物質の検索、作用機構
 (4)植物における細胞増殖停止機構

  本研究分野は細胞分裂の課程で細胞の機能が維持されたり変化したりする仕組みを解明し、ストレス応答や細胞分化に細胞複製と増殖、ゲノム複製分配機構がどのような役割を果たしているのかに興味をもち研究を進めている。以下に、各研究テーマの平成17年に得られた主な成果を記す。

(1)染色体遺伝子の複製とゲノムの分配に関わる研究
  本研究では、細胞分裂の際、遺伝子の複製(コピー)が染色体上のどこから始まるのか、複製されたゲノムがどのように子孫に分配されているのかに注目して研究を進めている。
 我々はこれまで複製開始および転写プロモーターの2つの機能を持つoriA1領域をアルドラーゼB(AldB)遺伝子上流に見いだし、その機能を解析してきた。
  oriA1に結合するAlF-C蛋白質が複製開始領域認識複合体ORC (Origin Recognition Complex) のサブユニット(Orc1)と結合することを明らかにした(斎藤ら、Nucleic Acids Res., 2002)。これは、哺乳動物の複製開始位置の決定が、AlF-CなどのDNA結合因子を介したORCのリクルートによっておこることを示唆した初めての例である。これによって、これまで混沌としていた高等生物の複製開始領域には共通配列がないのかという疑問を解決できる。
  本年度はゲノム中に存在するあらたなAlF-C結合部位をクロマチン免疫沈降法により確認し、さらにその部位からの複製開始活性を明らかにした。これらの研究結果から、AlF-Cが結合する配列が複製開始領域の決定に重要な役割を果たしていると考えられた。また、oriA1中のPPuサイトが1本鎖あるいは3本鎖形成をしやすい特徴的な配列であり、そこに結合する因子としてPurタンパク質を同定した。さらにゲノム中のPPuサイトを欠失させると、Purタンパク質が結合しなくなり、oriA1の複製開始活性が消失することを明らかにした(下平ら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 340, 517-525, 2006)。これらの結果から、哺乳類ではORC以外のタンパク質が複製オリジンに結合することが複製開始に重要な役割をはたしていることが明らかになってきた。
  また、従来複製開始複合体を複製開始点にリクルートする機能をもつと考えられてきたORCのサブユニットの1つOrc1が細胞分裂期において、中心体に局在することを明らかにした。これにより、Orc1はゲノム複製に関わるだけではなく、ゲノムの分配に関わる新機能を有する可能性が考えられた。

(2)リンドウ越冬芽の形成、寒冷耐性、休眠の機構
 リンドウ切り花の生産は岩手県が全国一である。主な切り花品種であるエゾリンドウ(Gentiana triflora)はF1品種として生産されているが、親株は自殖弱勢が強く、自殖を重ねると形質が弱まったり変化したりする。このため、親株の効率的な維持、増殖法の確立のために、越冬芽形成能力の向上が緊急の育種目標となっている。 現在までに、越冬芽で特異的に発現するタンパク質および他に比べ越冬芽で濃度の高いタンパク質を13種類同定した。それらの部分アミノ酸配列を決定した結果、興味あることに、それらの中には国内外の他の研究グループが通常低温などのストレスで誘導されるタンパク質として同定したものが7種類存在した。これらのタンパク質の越冬芽への蓄積について調べたところ、夏季の越冬芽形成時期にすでに始まっていることがわかった。このことから、越冬芽は冬に備えてあらかじめ低温耐性に関わるタンパク質を蓄積しているものと考えられた(高橋ら、Breeding Sci. 印刷中)。

(3)リンドウの生理活性物質の検索、作用機構
  リンドウの根は地中深く生長し、腐敗しにくく処理が困難であり、切り花生産者にとっては"産業廃棄物"である。そこで我々は、表記の研究を開始し、根の有効利用を図ろうとしている。
  リンドウ根から水溶性抽出物を調製して種々の培養ガン細胞に加えて見たところ、細胞死誘導あるいは増殖停止効果が認められた(松川ら、Biosci. Biotech. Biochem. 印刷中)。そこで、リンドウ根エキスから細胞増殖停止に関わる分子の精製をおこなっている。今年度は、この分子を精製し、その構造を決定した(特許申請準備中)。

(4)植物における細胞増殖停止機構
  細胞増殖は細胞周期に沿ってすすみ、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)が細胞周期進行に重要な役割をはたしている。細胞分化時、各種ストレスにより、細胞は増殖を停止する。細胞増殖の停止にはCDK阻害タンパク質(CKI)が必要であることが動物細胞においてわかってきている。植物における細胞増殖停止機構の解明を目指し、植物のCKIに注目した研究を続けている。シロイヌナズナCKIの発現を調べたところ、細胞増殖停止に呼応するもの、しないものがあることがわかった。また、低温処理によりCKIは発現が誘導されていた。イネにおけるCKIについて調べたところ、5種類のCKIが発現していることがわかり、そのうちの1つは穂で特異的に発現していることがわかった。今後これらの遺伝子の各組織における機能を細胞増殖との関連に注目しながら研究を進める予定である。

研究成果
(a) 発表論文及び著書
◇著書

堤 賢一(分担執筆)(2005)
植物育種学辞典(日本育種学会編). 免疫学領域.
2005年7月刊, 培風館, 東京.

◇原著論文
Takahashi, M., Hikage, T., Yamashita, T., Saitoh, Y., Endou, M. and Tsutsumi, K. (2006)
Stress-Related Proteins Are Specifically Expressed under Non-Stress Conditions in the Overwinter Buds of the Gentian Plant Gentiana triflora.
Breeding Science, in press.  [summary]

Shimotai, Y., Minami, H., Saitoh, Y., Onodera, Y., Mishima, Y., Kelm Jr. R. J. and Tsutsumi, K.(2006) A binding site for Pura and Purb is structurally unstable and is required for replication in vivo from the rat aldolase B origin.
Biochem, Biophys. Res. Commun., 340, 517-525. (published online December 20, 2005)  [summary]

Matsukawa, K., Ogata, M., Hikage, T., Minami, H., Shimotai, Y., Saitoh, Y., Yamashita, T., Ouchi, A., Tsutsumi, R., Fujioka, T. and Tsutsumi, K. (2006)
Antiproliferative activity of root extract from gentian plant (Gentiana triflora) on cultured and implanted tumor cells.
Biosci. Biotech. Biochem.  (in press)  [summary]

Yoshino, M., Nagamatsu, A., Tsutsumi, K. and Kanazawa, A.(2006)
The regulatory function of the upstream sequence of the β-conglycinin α-subunit gene in seed-specific transcription is associated with the presence of RY sequence.
Genes & Genetic Systems (in press)  [summary]

(b) 学会発表
斎藤 靖史, 南 宏幸, 下平 義隆, 堤 賢一(2005)
哺乳類特異的なORC機能および複製開始機構の解析
第22回染色体ワークショップ, 仙台.

斎藤 靖史, 堤 賢一(2005)
細胞周期におけるORCサブユニットの局在、機能の解析
日本農芸化学会2005年大会, 札幌.

南 宏幸, 斎藤 靖史, 堤 賢一(2005)
哺乳類のDNA複製開始部位選択に関与するタンパク質
日本農芸化学会2005年大会, 札幌.

下平 義隆, 斎藤 靖史, 堤 賢一(2005)
DNA複製開始に関与する一本鎖DNA結合因子
日本農芸化学会2005年大会, 札幌.

Saitoh, S., Saitoh, Y. and Tsutsumi, K.(2005)
Nucleocytoplasmic shuttling of AlF-C proteins which bind to an origin/promoter of the rat aldolase B gene.
第78回日本生化学会大会 ワークショップ採択, 神戸.

(c) 講演等
斎藤 靖史(2005)
卵、種からはじまる生命と体の細胞から再生する生命
宮城県仙台向山高等学校 出前講義, 仙台.


2.寒冷シグナル応答研究分野(木藤 新一郎)

研究テーマ
 (1)シロイヌナズナの春化を制御する因子の単離同定
 (2)VRN2類似の新規ポリコーム遺伝子とオオムギ春化機構との関連性
 (3)寒冷地適応作物である麦類特異的なタンパク質P23kの機能
 (4)リンゴの花芽形成を支配する因子の単離と機能解析

  温帯から亜寒帯に生息する植物は、寒冷な気候に適応するための様々な自己防衛システムを備えているが、その詳細な機構解析が進んでいない。よって、寒冷地農業の作物生産にとって非常に有用な形質であるにもかかわらず、育種への応用がほとんど計られていないのが現状である。本研究分野では、寒冷地適応型植物が有する独自の有用物質を分子レベルで解明するための研究を展開している。以下に、各研究テーマの平成17年に得られた主な成果を記す。

(1)シロイヌナズナの春化を制御する因子の単離同定
  春化は、秋に発芽した植物が冬に花を咲かせてダメージを受けないように一定期間の低温環境(冬季)を経験しないと栄養成長から生殖成長への移行が起こらない(花芽が形成されない)機構である。最近になり、共同研究者である英国ジョンイネスセンターのC. Dean教授のグループにより春化を誘導する因子としてVRN1とVRN2が、そして春化を抑制する因子としてFRIが単離同定され、解析が進められている。しかし、春化誘導経路には更なる複数の未知遺伝子が存在すると考えられており、それらの同定が春化を取り巻く分子機構の解明に欠かせないと考えられている。そこで本研究では、すでに単離されているVRN1、VRN2およびFRIを用いて、それらと相互作用する因子の単離を試みた。その結果、複数の候補遺伝子が単離できており現在それらが春化誘導経路に関与する新規遺伝子であることを確認するために変異株を用いて春化要求性の解析を行っている。本研究は、英国ジョンイネスセンターとの共同研究である。

(2)VRN2類似の新規ポリコーム遺伝子とオオムギ春化機構との関連性
  人類の主要な食物である麦類も春化要求性植物であるが、シロイヌナズナと異なり分子レベルでの研究が進んでいないのが現状である。そこで本研究分野では、シロイヌナズナで報告されている春化関連遺伝子(VRN2)のホモログを単離し、麦の春化も同様に機構で制御されているのか否かの検証を行っている。本研究では、オオムギの春化処理とVRN2類似遺伝子の発現制御に相関性があるか否かの解析を行った。その結果、単離したVRN2類似遺伝子の発現は恒常的であり春化の前後で変化がないことが明らかとなった。しかし、ウエスタン解析の結果、VRN2類似遺伝子がコードするタンパク質が時期特異的に修飾を受けていることも明らかとなり、この修飾と春化との関連性を解析している。

(3)寒冷地適応型作物である麦類特異的なタンパク質P23kの機能
  本研究分野では、オオムギやコムギなどの寒冷地に適応したイネ科作物のみが持つ新規タンパク質(P23k)を同定し、種子を出入り口とした糖の転流乃至はその制御機構に関与していることを突き止めつつある。しかし、P23kには機能推定に繋がる既知のドメインやモチーフ構造が存在しないことからP23kの転流機構における詳細な機能や寒冷地適応のいかなる役割を果たしているかは不明である。そこで本研究では、オオムギの一生を通じたP23kの発現解析を詳細に行うとともに、細胞内でP23kと共同で働く因子の単離同定を試みた。その結果、P23kはオオムギ全ての生活環で糖の転流が生じている部位特異的に発現が起きていることが明らかとなり、麦類特異的な新規転流関連因子であることが明らかとなった。また、P23kには複数の共同で働く相互作用因子が存在することも明らかとなり、現在、免疫沈降法や酵母のTwo-hybridシステムを利用してP23k相互作用因子の同定を試みている。

(4)リンゴの花芽形成を支配する因子の単離と機能解析
  リンゴは比較的寒冷な地域での栽培に適していることから、岩手県が位置する北東北地方は我が国におけるリンゴの主要生産地となっている。それに伴い当地域にはリンゴを研究対象とする研究機関が数多く存在し、これまでに「ふじ」「さんさ」等の日本を代表する有用品種が品種改良により作られてきている。しかし、バラ科の木本植物であるリンゴは苗の状態から実をつけるまでに10年以上の期間を要することから有用品種の選定に多大な労力と時間がかかっているのが現状である。そこで本研究では、リンゴ花成(結実)時期の人為的な制御を目的に、リンゴの花成に関与する遺伝子を同定し機能解析を試みている。これまでのところ、シロイヌナズナで単離されている花芽形成関連遺伝子のホモログを単離することに成功している。現在は、主として花成抑制因子であるEMF2に的を絞って解析を行い、その欠損株で花成が促進されるか否かの確認実験に取りかかっている。なお、本研究は独立行政法人・生物系特定産業技術研究機構・果樹研究所との共同研究である。

研究成果
(a) 学会発表

Oikawa, A., Kidou, S.(2005)
Expression of a 23kDa protein is up-regulated by sugers at various developmental stages in barley.
Gordon Research Conference on Temperature Stresses in Plants, Ventura, CA, USA.

Oikawa, A., Kidou, S.(2005)
A barley 23kDa protein which is up-regulated by sugars at various developmental stages
10th International Congress of SABRAO, Tsukuba, Japan.

(b) 他の学内研究室及び学外研究機関との共同研究(下線はセンター所属の教員、院生、学生)
◇原著論文

Yasuda, H., Kanda, K., Koiwa, H., Suenaga, K., Kidou, S. and Ejiri, S.(2005)
Localization of actin filaments on mitotic apparatus in tobacco BY-2 cells.
Planta, 222: 118-129.  [Summary]

◇学会発表
及川 愛, 山下 哲郎, 木藤 新一郎(2005)
糖依存的に発現上昇するオオムギ23kDaタンパク質の解析
第46回日本植物生理学会年会, 新潟.

高橋 正, 村上 弘樹, 木藤 新一郎, 平 秀晴, 山下 哲郎(2005)
カルレティキュリン遺伝子プロモーターに存在するLPS応答エレメントの解析
日本蚕糸学会第75回大会, 東京.

高橋 正, 小澤 隆二, 松井 義樹, 木藤 新一郎, 平 秀晴, 山下 哲郎(2005)
変異フィブロインの発現に伴って誘導される遺伝子の同定と経時的解析
岩手大学-東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

及川 愛, 加藤 清明, 木藤 新一郎(2005)
生育の様々なステージで糖依存的に発現誘導されるオオムギ23kDaタンパク質
岩手大学-東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

神崎 比呂, 木藤 新一郎, 加藤 清明(2005)
イネ科作物におけるJIP-23遺伝子の多様性
日本育種学会第107・108回講演会, 筑波.

及川 愛, 加藤 清明, 木藤 新一郎(2005)
生育の様々なステージで糖依存的に発現誘導されるオオムギ23kDaタンパク質
日本育種学会第107・108回講演会, 筑波.


3.生体機能開発研究分野(上村 松生、伊藤 菊一)

研究テーマ
 (1)植物細胞の低温下での傷害発生とそれを回避する分子機構
 (2)植物の冷温耐性獲得分子機構
 (3)植物の発熱メカニズムの解析とその利用に関する研究

  本研究分野は、植物の低温適応のメカニズムを総合的に解明し、その成果を利用すること目的としている。現在、外来遺伝子を導入して低温などの環境ストレスに耐性を持つ植物を作成することが試みられているが、その試みが実用化されるためには、導入対象となる遺伝子がどのようなメカニズムでストレス耐性を増大させるのかという機能評価を行う必要がある。その基礎データを得るため、本研究分野では、植物の低温適応分子機構の解明、また、植物が低温下で生育できる機構を応用した植物遺伝資源の長期保存システム確立を目指して研究を行っている。以下に、平成17年に得られた主な成果を記す。

(1)植物の低温馴化過程の解析
  モデル植物として広く用いられているシロイヌナズナは、非常に短い時間(<6時間)で低温馴化が可能な植物である。そのため、低温馴化や凍結傷害機構と分子生物学知見を結びつける最適材料の一つと考えられる。本研究室では、低温馴化初期過程で特異的に出現する細胞膜タンパク質lipocalin-likeタンパク質(AtLCN)の機能解析を続けている。平成17年には、AtLCN組換えタンパク質を大腸菌で大量に作製する実験系を確立し、その抗体を作製した。それらを用いて、AtLCNと細胞膜の間で形成されるであろう相互作用の実体に迫ることを計画した。その結果、まだ初期実験であるものの、AtLCNと細胞膜に含まれるマイナーなリン脂質、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、および、ホスファチジン酸との結合が確認された。しかし、細胞膜に含まれる主要リン脂質であるホスファチジルコリンやホスファチジルエタノールアミンとの結合は確認されなかった。従って、AtLCNは細胞膜に存在する特異的な脂質と相互作用している可能性があり、それによって凍結融解過程での細胞膜の安定性に寄与していることが示唆される。今後、インタクトな探知細胞膜画分や細胞膜から抽出された脂質などを用いてさらに実験を進めていく所存である。
  動物細胞を用いた研究から、細胞膜微小領域(MicrodomainあるいはRaft)が、細胞膜が受け取る(低温)信号の細胞内への伝達に関与していることが示されている。そこで、植物の低温応答機構に対する細胞膜ラフトの関与を解析する実験を開始した。細胞膜ラフトには、糖セレブロシドやステロール脂質、および、特定の細胞膜タンパク質が局在していることが示されている。シロイヌナズナにおいても同様の結果が報告されているが、ストレス応答に関する細胞膜ラフトの関与に関する報告はなく、非常に興味深い問題といえる。平成17年は、低温馴化前後のシロイヌナズナ幼植物体から単離された細胞膜からラフト画分を精製することを試みた。その結果、Triton X-100に抵抗性のあるラフト画分を単離でき、そのタンパク質組成解析を行うことができた。ラフトに存在するタンパク質組成は、低温馴化前後で変化することから、確かに低温に応答していることが示された。さらに、ラフトに存在することが報告されているタンパク質の抗体を入手し、細胞膜タンパク質をラベルし、顕微鏡下でその分布を調べることを行っている。今後のさらなる研究継続を目指している。
  一方、低温誘導性転写因子CBF/DREBが凍結耐性増大だけではなく、他の環境ストレス耐性を増大することが報告され始めた。そこで、低温馴化できるジャガイモ近縁種(Solanum commersonii)のCBF1恒常発現形質転換植物と野生型植物の細胞微細構造の比較を開始した(Oregon State University, Tony Chen教授との共同研究)。CBF1遺伝子を恒常発現させたS. commersoniiは凍結耐性が若干増加することが知られている。まだ、予備的な実験段階であるが、両者や低温馴化後の野生型を用いて、どのような形態的変化と凍結耐性の増加が関連しているのかを調査している。今後、低温馴化能がない栽培ジャガイモ(S. tuberosum)との比較に進める予定である。
  シロイヌナズナ培養細胞を用いた低温馴化分子機構の解析も継続している。平成17年は、低温処理過程で発現が急速に増大する遺伝子をいくつか選択し、その発現をRNAiで押さえた形質転換培養細胞を作製した。常温での遺伝子発現の抑制は確認されたが、低温ではRNAiが働かなかった。現在、アンチセンス法を用いた対象遺伝子の発現抑制を試みている。一方、シロイヌナズナ懸濁培養細胞はABA処理によっても凍結耐性を一過的に増大させることが明らかになった。その凍結耐性獲得は、低温処理をしたときと同様に誘導期細胞でABA処理(25μM)1日でのみ見られる。興味深いことに、ABA処理をした細胞においては、低温誘導性遺伝子(COR15aRD29A)mRNAの蓄積は見られるものの、それらのタンパク質産物は蓄積しないことが明らかになった。つまり、ポストトランスクリプショナルな就職が起こり、タンパク質が生成されない可能性がある。これが、培養細胞と植物体の低温やABAに対する応答性の際をもたらしているのかもしれない。

(2)植物の冷温耐性獲得分子機構
  当研究室では、低温(0℃以上)で傷害が発生するトマトの低温耐性機構の解析を行っている。トマトの栽培種(Lycoperisicon esculentum)に比べ野生種(Lycopersicon hirsutum LA 1777)は低温耐性が非常に大きく、それらを比較することで低温耐性に重要な因子を同定することを目指した。野生型トマトからCBF相同遺伝子(LhCBF1)の単離に成功し、その配列決定と発現解析を行った。その結果、LhCBF1と栽培型トマトに存在するLeCBF1遺伝子の間に高い相同性が見られた。低温処理過程における発現を見ると、LhCBF1が常温でも発現が見られ、低温処理開始とともに発現上昇が起こりその発現が長く持続するのに対し、LeCBF1は低温処理後若干発現が高くなるものの、すぐにその発現は常温処理されたトマトと同じレベル(ほとんど発現していない)まで戻ることが明らかになった。その詳細な意味づけは今後の研究を待たなければならないが、今回得られた結果は、トマトなどの冷温耐性とCBF遺伝子の関与を考える上で興味深い。
  さらに、当研究センター客員教授である猿山晴夫氏(株・北海道グリーンバイオ研究所)とともに、イネの冷温耐性に関わる活性酸素の関わりについて、コムギカタラーゼを過剰発現させた形質転換イネを用いて研究を継続している。平成17年には、イネの根だけを冷却した実験系を構築し、冷温耐性やカタラーゼ活性の変動、そして、根における活性酸素の発生量を蛍光試薬を用いて可視化する試みを行った。現在、実験系が確立されてきたので、詳細なデータを取ることを目指して実験を進めている。

(3)ザゼンソウの発熱制御システムの解析
  早春に花を咲かせるザゼンソウは氷点下を含む外気温の変動にもかかわらず、その発熱部位である肉穂花序の温度をほぼ20℃内外に維持する能力を有している。本研究においては、肉穂花序における熱産生の素反応の関わる因子の解析等を通じて、植物界では例外的な存在である発熱植物の温度制御システムに関わるメカニズムを明らかにすることを目的としている。これまでの研究で、本植物の高レベルの発熱反応はそのミトコンドリアで発現している特異的な蛋白質が密接に関与していることを明らかにしてきた。また、ザゼンソウにはその恒温性を保証する極めて精密な温度制御システムが存在し、その温度認識に関わる閾値は、±0.9℃であることが判明している。興味深いことに、ザゼンソウの発熱は、Zazen attractorと命名したストレンジアトラクターで特徴付けられるカオス的な現象であることが明らかになり、当該成果は米国物理学会誌(Physical Review E)に掲載された。なお、本論文は、Science Online News、英国New Scientist誌、仏国Pour la Science誌でも紹介され、世界的な反響を呼んでいる。

研究成果
(a) 発表論文及び著書
◇原著論文

Onda, Y. and Ito, K. (2005)
Changes in the composition in xylem sap during development of the spadix of skunk cabbage (Symplocarpus foetidus).
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 69:1156-1161.  [Summary]

Ito, T. and Ito, K.(2005)
Nonlinear dynamics of homeothermic temperature control in skunk cabbage, Symplocarpus foetidus.
Physical Review E, 72, 051909.   [Summary]

◇著書
伊藤 菊一(2005)
発熱遺伝子を持つ植物・ザゼンソウ
テクノカレント, 404: p2-13.

(b) 学会発表
Uemura, M.(2005)
Plasma membrane protein changes during cold acclimation.
Gordon Research Conference on Temperature Stresses in Plants, Ventura, CA, USA. ※Invited talk

Onda, Y. and Ito, K.(2005)
Developmental changes in the composition in xylem sap are related to the stigma-specific and cold-inducible heat production in skunk cabbage (Symplocarpus foetidus)
Gordon Research Conference on Temperature Stresses in Plants, Ventura, CA, USA.

加藤 喜明, 松川 和重, 伊藤 菊一(2005)
酵母発現系によるザゼンソウ脱共役タンパク質(SfUCPa, SfUCPb)の機能解析
日本農芸化学会2005年大会, 札幌.  ※学会記者会見発表採択

Onda, Y. and Ito, K.(2005)
Thermoscopic identification of thermogenic cells that co-express both SfAOX and SfUCPb genes in the spadix of skunk cabbage, Symplocarpus foetidus.
International Congress on Plant Mitochondrial Biology, Obernai, France.

Otsuka, M., Kato, Y., Onda, Y., Matsukawa, K., Ito, Y. and Ito, K.(2005)
Pyruvate-specific activation of alternative oxidase in the mitochondria of thermogenic spadix of skunk cabbage, Symplocarpus foetidus.
International Congress on Plant Mitochondrial Biology, Obernai, France.

伊藤 菊一(2005)
ザゼンソウを模倣した温度制御アルゴリズムの開発とその生物系発熱制御デバイスへの応用
岩手大学−東北大学国際シンポジウム, 仙台.

Moustafa, Y. and Uemura, M.(2005)
Behavior of different tomato cultivars under chilling stress
岩手大学-東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

南 杏鶴, 上村 松生(2005)
低温馴化過程における脂質ラフト局在膜タンパク質の発現解析
岩手大学-東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

長尾 学, 上村 松生(2005)
陸上植物の祖先にあたる緑藻シャジクモ綱 Klebsormidium flaccidum の低温馴化と耐凍性
岩手大学-東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

伊東 靖子, 加藤 喜明, 大塚 稔, 恩田 義彦, 松川 和重, 伊藤 菊一(2005)
ザゼンソウの熱産生に関与する脱共役蛋白質(UCP)の構造と機能に関する研究
岩手大学−東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

Onda, Y. and Ito, K.(2005)
Mitochondrial alternative oxidase and novel uncoupling protein co-express in thermogenic cells of skunk cabbage, Symplocarpus foetidus.
岩手大学−東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

加藤 喜明, 松川 和重, 伊藤 菊一(2005)
酵母発現系による膜貫通ドメイン5番が欠失した脱共役タンパク質の解析
岩手大学−東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

松川 和重, 伊藤 菊一(2005)
動物細胞における膜貫通ドメイン5番を欠失した脱共役タンパク質の発現とその機能解析
岩手大学−東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

大塚 稔, 伊藤 菊一(2005)
ザゼンソウ熱産生システムにおける植物ホルモンの役割
岩手大学−東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

伊東 靖子(2005)
大腸菌リポ蛋白質選別輸送を担うABCトランスポーターの反応機構
第6回日本農芸化学会東北支部若手シンポジウム, 鶴岡.  ※若手奨励賞受賞講演

伊東 靖子(2005)
大腸菌リポ蛋白質の選別輸送を担うABCトランスポーターの反応機構
日本農芸化学会東北支部第140回大会, 鶴岡.

恩田 義彦, 松川 和重, 加藤 喜明, 伊藤 菊一(2005)
ザゼンソウの発熱細胞におけるシアン耐性呼吸酵素と新規脱共役タンパク質の共発現と温度認識
第28回日本分子生物学会年会, 福岡.

加藤 喜明, 松川 和重, 伊藤 菊一(2005)
発熱植物ザゼンソウから得られた新規UCP遺伝子を導入した出芽酵母細胞の機能解析 第28回日本分子生物学会年会, 福岡.

松川 和重, 伊藤 菊一(2005)
動物細胞における膜貫通ドメイン5番を欠失した脱共役タンパク質の発現とその機能解析
第28回日本分子生物学会年会, 福岡.

伊藤 菊一(2005)
ザゼンソウの温度制御システムとその応用
日本植物学会東北支部第18回岩手大会 公開シンポジウム, 盛岡.

(c) 講演等
上村 松生(2005)
岩手大学21世紀COEプログラム:寒冷気候に適した生物から学ぶ
INS「海洋と社会」研究会第2回研究会, 釜石.

伊藤 菊一(2005)
ザゼンソウと自然保護
北上市藤根ザゼンソウ園里開き記念講演会, 北上.

伊藤 菊一(2005)
発熱する植物、ザゼンソウ
白馬ざぜん草祭り講演, 白馬.

伊藤 菊一(2005)
ザゼンソウの温度制御システム
東北大学大学院生命科学研究科 遺伝子システム学講座セミナー, 仙台.

上村 松生(2005)
はじめに:岩手大学21世紀COEプログラムの紹介
岩手大学−東北大学ジョイント国際シンポジウム, 仙台.

上村 松生(2005)
植物における細胞膜タンパク質と凍結耐性
京都大学理学部セミナー, 京都.

伊藤 菊一(2005)
ザゼンソウの世界
一戸町民セミナー, 一戸.

伊藤 菊一(2005)
発熱植物メカニズムを解析し温度を制御する技術を産業に応用する研究
平成17年度東北農業試験研究推進会議生物工学推進部会生物工学研究会シンポジウム, 盛岡.

伊藤 菊一 (2005)
恒温植物が有する発熱制御特性に基づく先端的産業応用
イノベーション・ジャパン2005, 東京.

上村 松生(2005)
寒冷環境に生きる生物の適応機構を探る:岩手大学COEプログラムの挑戦
放射線取扱主任者部会東北支部第8回バーデンゼミナール, 盛岡.

上村 松生(2005)
生物と熱エネルギー:寒冷環境に生きる生物に学ぶ
石油学会盛岡大会(第35回石油・石油化学討論会)特別講演, 盛岡.

上村 松生(2005)
岩手大学21世紀COEプログラム(熱−生命システム相関学拠点創成:生物の寒冷応答機構をモデルとして)紹介
北海道大学大学院農学研究科木材生物学講座セミナー, 札幌.

上村 松生(2005)
植物はどのようにして熱情報を受容し伝達するか?:寒冷環境応答を例として
日本伝熱学会東北支部秋季セミナー, 八幡平.

伊藤 菊一 (2005)
ザゼンソウ型温度制御アルゴリズムの先端的産業応用
岩手大学との連携による新技術説明会, 東京.

(d) 特許
伊藤 菊一,加藤 喜明,松川 和重(2005)
ミトコンドリアの機能改変方法
特許出願, 出願番号:特願2005-61168, 日本.

伊藤 菊一、伊藤 孝徳(2005)
生体時系列信号解析装置及び生体信号解析方法
特許取得,特許番号:第3658623号, 日本.

伊藤 菊一(2005)
Thermogenesis-associated genes and thermogenesis-associated proteins of plant
特許取得,特許番号:6,927,288, 米国.

(e) 他の学内研究室及び学外研究機関との共同研究(下線はセンター所属の教員、院生、学生)
◇原著論文

Sarker, B. C., Hara, M. and Uemura, M. (2005)
Proline synthesis, physiological responses and biomass yield of eggplants during and after repetitive soil moisture stress.
Scientia Horticulturae 103: 387-402.  [Summary]

Wagatsuma, T., Uemura, M., Mitsuhashi, W., Maeshima, M., Ishikawa, S., Kawamura, T., Maruyama, T., Shiono, Y., Khan, Md. S. H. and Tawaraya, K. (2005)
A new and simple technique for the isolation of plasma membrane lipids from root-tips.
Soil Science and Plant Nutrition, 51: 135-139.  [Summary]

Ito, K. and Seymour, R. S.(2005)
Expression of uncoupling protein and alternative oxidase depends on lipid or carbohydrate substrates in thermogenic plants.
Biology Letters, 1: 427-430.  [Summary]

Sakurai, J., Ishikawa, F., Yamaguchi, T., Uemura, M. and Maeshima, M. (2005)
Identification of 33 rice aquaporin genes and analysis of their expression and function.
Plant & Cell Physiology, 46:1568-1577.  [Summary]

Wagatsuma, T., Ishikawa, S., Uemura, M., Mitsuhashi, W., Kawamura, T., Khan, Md. S. H. and Tawaraya, K. (2005)
Plasma membrane lipids are the powerful components for early stage aluminum tolerance in triticale.
Soil Science and Plant Nutrition, 51: 701-704.  [Summary]

Koide, S., Atungulu, G., Uemura, M. and Nishiyama, M.(2005)
Mechanical properties and viability of Japanese radish cylinders immersed in sodium chloride solutions.
Biosystems Engineering 92: 335-340.  [Summary]

◇著書
Wagatsuma, T., Rao, I. M., Wenzl, P., Khan, Md. S. H., Tawaraya, K., Igarashi, K., Murayama, T., Kawamura, T., Ishikawa, S. and Uemura, M.(2005)
The plasma membrane lipid bilayer plays a key role in high level Al resistance in signalgrass (Brachiaria decumbens): a new feature of Al resistance.
In: Plant Nutrition for Food Security, Human Health and Environmental Protection (C.J. Li, F.S. Zhang, A. Dobermann, P. Hinsinger, H. Lambers, X.L. Li, P. Marschner, L. Maene, S. McGrath, O. Oenema, S.B. Peng, Z. Rengel, Q.S. Shen, R. Welch, N. von Wir?n, X.L. Yan, Y.G. Zhu, eds.), Tsunghua University Press, Beijing, pp. 650-651.

Saruyama, H., Onodera, H. and Uemura, M.(2005)
Transgenic rice plants expressing wheat catalase show improved tolerance for chilling-induced damage in membranes.
In: Rice Is Llife: Scientific Perspectives for the 21st Century (K. Toriyama, K.L. Heong, B. Hardy, eds.), IRRI-JIRCAS, Los Banos-Tsukuba, pp. 108-110.

◇学会発表
Sasaki, Y., Yoshida, R., Shinozaki, K., Seki, M., Oono, Y. and Uemura, M.(2005)
Characterization of cold acclimation process in Arabidopsis T87 suspension cultured cells.
Gordon Research Conference on Temperature Stresses in Plants, Ventura, CA, USA.

佐々木 裕, 吉田 理一郎, 関 原明, 篠崎 一雄, 上村 松生(2005)
培養細胞と植物体が示す低温応答の比較による低温馴化機構の解析
第46回日本植物生理学会年会, 新潟.

河村 幸男, 上村 松生(2005)
細胞膜修復機構から凍結耐性の仕組みを考える
第46回日本植物生理学会年会, 新潟.

Ito, K. and Ito, T.(2005)
Homeothermic heat-production in the spadix of skunk cabbage, Symplocarpus foetidus. 第46回日本植物生理学会年会, 新潟.

田中 大介, 新野 孝男, 土屋 淑子, 上村 松生(2005)
ハヤチネウスユキソウのガラス化法による超低温保存法の確立
平成17年度園芸学会春季大会, 筑波.

Ito, T. and Ito, K.(2005)
Nonlinear dynamics of homeothermic temperature control in skunk cabbage, Symplocarpus foetidus.
International Congress on Plant Mitochondrial Biology, Obernai, France.

Sasaki, Y., Takahashi, K., Oono, Y., Seki, M., Shinozaki, K. and Uemura, M.(2005)
Induction of freezing tolerance of Arabidopsis suspension cells after cold or ABA treatment.
Plant Biology 2005, Seattle, WA, USA.

Tanaka, D., Niino, T., Uemura, M. and Fujikawa, S.(2005)
Ultrastructural evidence for the effects of rapid cooling on meristematic cells of monocotyledonous plant by the encapsulation-vitrification protocol using cryo-scanning electron microscopy.
The 42nd Meeting of the Society for Cryobiology, St. Paul, MN, USA.

佐々木 裕, 大野 陽子, 吉田 理一郎, 関 原明, 篠崎 一雄, 上村 松生(2005)
シロイヌナズナ培養細胞が示す低温馴化機構の解析
岩手大学-東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

桜井 淳子, 石川 文義, 山口 知哉, 村井 麻理, 前島 正義, 上村 松生(2005)
イネアクアポリンの多様性とその発現及び機能解析
岩手大学-東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

河村 幸男, 山崎 誠和, 上村 松生(2005)
植物の凍結耐性と細胞膜修復
岩手大学-東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

山崎 誠和, 河村 幸男, 上村 松生(2005)
低温馴化過程におけるプロトプラストを用いた細胞膜とER構造の生体観察
岩手大学-東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

Ito, K. and Seymour, R. S.(2005)
Selective expression of thermogenic genes in heat-producing plants.
岩手大学−東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

伊藤 孝徳, 高橋 賢, 遠藤 雄大, 千葉 茂樹, 伊藤 菊一, 長田 洋(2005)
発熱植物ザゼンソウの温度制御アルゴリズムとその工学的応用
岩手大学−東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

中島 章仁, 伊藤 孝徳, 鳥巣 諒, 伊藤 菊一(2005)
決定論的非線形予測手法を用いたハスの発熱現象の解析
岩手大学−東北大学国際シンポジウム 若手ポスター発表会, 仙台.

Tanaka, D., Niino, T., Tsuchiya, Y. and Uemura, M.(2005)
Cryopreservation of in-vitro grown shoot tips of currant by encapsulation-vitrification protocol.
The 10th International congress of SABRAO, Tsukuba, Japan.

Saruyama, H. and Uemura, M.(2005)
Transgenic rice plants overexpressing wheat catalase show improved tolerance against chilling-induced damage in membranes.
The 10th International congress of SABRAO, Tsukuba, Japan.

山崎 誠和, 河村 幸男, 上村 松生(2005)
低温馴化前後における植物細胞膜の動態
日本植物学会第69回大会, 富山.

河村 幸男, 山崎 誠和, 上村 松生(2005)
凍結耐性の上昇と細胞膜修復
日本植物学会第69回大会, 富山.

Ito, K., Abe, Y., Johnston, D. S. and Seymour, R. S.(2005)
Isolation of a gene encoding uncoupling protein from the thermogenic inflorescence of the dead horse arum Helicodiceros muscivorus.
第6回日本農芸化学会東北支部若手シンポジウム, 鶴岡.

猿山 晴夫, 上村 松生(2005)
コムギカタラーゼ遺伝子導入イネの耐冷性向上機構
平成17年度農林水産業北海道地域研究成果発表会, 札幌.

伊藤 孝徳、伊東 靖子、長田 洋、伊藤 菊一(2005)
ザゼンソウ型温度制御アルゴリズムに基づく体温振動リズムの解析
第28回日本分子生物学会年会, 福岡.  ※ワークショップ発表採択

重松 智美, 富永 陽子, 上村 松生(2005)
シロイヌナズナの低温応答性細胞膜タンパク質の機能解析
日本植物学会東北支部第18回大会, 盛岡.

佐々木 裕, 大野 陽子, 関 原明, 篠崎 一雄, 上村 松生(2005)
シロイヌナズナ培養細胞の低温馴化機構
日本植物学会東北支部第18回大会, 盛岡.


4.主催したシンポジウム

第6回CRCシンポジウム「生命・環境と岩手の自然」
  日時:2005年10月31日(月)
  会場:岩手大学附属図書館2F 生涯学習・多目的学習室

 10月31日に附属図書館2階 生涯学習・多目的学習室において第6回CRCシンポジウム「生命・環境と岩手の自然」を開催しました。例年テーマを決めて外部の先生に講演をお願いしていますが、今回は、センターの平成17年度客員教授である5名の先生方に、それぞれの研究内容・専門分野に関するお話しをしていただきました。当日は学内外から多くの参加者がありました。講演内容も分子生物学から環境保全まで幅広いもので、有意義なシンポジウムとなったと考えております。

−講演題目と講演者−
「鉄貯蔵たんぱく質フェリチンを用いた分子育種」
  後藤 文之(財団法人 電力中央研究所 我孫子研究所 生物科学部 主任研究員)

「重金属汚染土壌のファイトレメディエーションの現状と課題」
  近藤 敏仁(株式会社フジタ 土壌環境事業部 事業部長)

「北海道産小麦の新規利用のための小麦粉タンパク質の解析とインスタントラーメン開発への応用」
  猿山 晴夫(株式会社北海道グリーンバイオ研究所 遺伝子研究部 部長)

「宮沢賢治が愛したイーハト−ブの自然」
  瀬川 強 (フォトグラファー、カタクリの会代表、自然観察指導員ネットワーク岩手代表、日本野鳥の会北上支部幹事)

「ペプチド鎖伸長因子EF-1の超多機能性:生体防御への関与を中心に」
  江尻 愼一郎(岩手大学名誉教授)

日本植物生理学会2005年度年会シンポジウム
  「Frontiers of environmental stress adaptation researches in plants」

  日時:2005年3月24日(木)
  会場:新潟コンベンションセンター 朱鷺メッセ

日本植物生理学会年会の開催に合わせて、東京大学大学院教授・篠崎和子氏と上村松生(生体機能開発研究分野)がオーガナイザーとなり、植物の環境ストレス応答分子機構の最先端研究を集め、公開シンポジウムを企画運営しました。講演題目と演者は、以下の方々である。

−講演題目と講演者−
"Small RNAs and abiotic stress responses"
  Jian-Kang Zhu (University of California-Riverside)

"Gene regulatory network in drought and cold stress responses"
  Kazuko Yamaguchi-Shinozaki (JIRCAS, University of Tokyo, CREST)

"Moss: a model system for environmental stress response research"
  Daisuke Takezawa (Saitama University)

"Sugars and plant freezing tolerance: physiology, molecular biology and molecular genetics"
  Ikuo Nishida (Saitama University)

"Thermoregulation in the spadix of skunk cabbage (Symplocarpus foetidus)"
  Kikukatsu Ito (Iwate University)


5.主催したセミナー

CRCセミナー

第30回1月25日「特許生物寄託制度と寄託機関としての特許生物寄託センターの紹介」
水澤 実加(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)
第31回 3月22日「Small RNAs and Abiotic Stress Responses」
Jian-Kang Zhu(University of California, Riverside, USA)
第32回6月29日「ドミナントリプレッサーを用いた植物転写因子の機能解析:機能性植物の創成に向けて」
高木 優(独立行政法人 産業技術総合研究所 ジーンファンクション研究センター)
第33回8月4日「Lipid Transfer Proteins May Have a Protective Role During Low Temperature Stress in Arabidopsis thaliana
Michael Schlappi(Marquette University, Milwaukee, USA)
第34回9月7日「植物の糖蓄積と耐凍性に関する分子遺伝学的研究」
西田 生郎(埼玉大学 理学部 分子生物学科)
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