寒冷バイオシステム研究センター
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>年報 2005 (Vol.8)>V目次 | II | III | IV | V | VI | VII | VIII

V.共同研究、当研究センターを利用した研究および当研究センターが参加するプロジェクト研究

3.民間及び地方自治体

◇独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構 作物研究所
担当稲研究部遺伝子技術研究室(若狭 暁 室長)
細胞複製研究分野(斎藤 靖史)
研究テーマRNAiを用いた選択的mRNA分解による遺伝子機能解析
研究概要  本研究では、イネゲノムの成果で得られた有用遺伝子の機能解明を進めるため、ベクター開発や関連した基礎的データの蓄積を行って、RNAi技術を利用した効率的なイネ遺伝子機能破壊法の開発と機能解析法としての適用を図る。

◇独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構 果樹研究所
担当リンゴ研究部育種研究室(古藤田 信博 博士)
寒冷シグナル応答研究分野(木藤 新一郎)
研究テーマリンゴ花成制御遺伝子の単離と発現解析
研究概要  リンゴの品種改良を効率よく進めるためには花成機構の解明が必要不可欠である。しかし、リンゴに関しては当該機構の解明が進んでおらず関連遺伝子の単離も進んでいないのが現状である。本研究では、リンゴにおいて花成を支配している遺伝子の単離・同定を試みている。

◇独立行政法人・農業生物資源研究所
担当遺伝資源研究グループ(石川 雅也 主任研究官)
生体機能開発研究分野(伊藤 菊一、上村 松生)
研究テーマ遺伝子組換え技術を応用した次世代型植物の開発に関する研究「熱産生機能を付加した低温回避イネの開発」
研究概要  低温ストレス耐性作物の作出は、我が国の主要作物であるイネの冷害の克服をはじめ、地球レベルでの安定した食料供給においても重要かつ緊急の課題である。本研究では、ザゼンソウより得られた脱共役タンパク質(UCP)をコードする遺伝子を導入したイネを作出し、その熱産生機能等の諸性質を解析することを目的とする。SfUCPaSfUCPb、および、SfAOXを導入したイネの遺伝子発現の解析を行うと共に、各種ストレス耐性に関する評価を行った。

◇独立行政法人 農業生物資源研究所
担当ジーンバンク(田中 大介 研究員、新野 孝男 上席研究官)
生体機能開発研究分野(上村 松生)
研究テーマ植物茎頂組織の超低温下における長期保存系の確立
研究概要  本研究は、植物茎頂組織を遺伝的変異なしに長期間安定した状態で保存する効率的なシステムの確立を目的としている。現在までに、イチゴ茎頂を用いて高生存率で保存可能なシステムを開発し、実際に100系統を越えるイチゴ茎頂の保存を行った。本研究結果は、国際学会で発表(2件)を行い、さらに、現在、原著論文として準備中である。

4.受託研究

◇独立行政法人・農業・生物系特定産業技術研究機構 北海道農業研究センター
名称「形態・生理機能の改変による新農林水産生物の創出に関する総合研究」
研究テーマ低温応答性細胞膜タンパク質の凍結耐性増大過程における機能の解析
研究概要  植物の低温馴化過程で発現誘導が起こる低温誘導性遺伝子のうち、細胞膜タンパク質(AtLCN)をコードしている遺伝子、および、その産物に注目し、それらが凍結傷害初発部位である細胞膜の凍結脱水抵抗性増大に対してどのような貢献をしているかを明らかにすることを目的としている。研究成果に関しては、生体機能開発研究分野の研究活動に記載した。

5.プロジェクト研究

◇生物系特定産業技術研究支援センター
名称新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業
研究テーマザゼンソウを模倣した温度制御アルゴリズムの解析とその生物系発熱制御デバイスへの応用
担当者伊藤 菊一(研究代表者、生体機能開発研究分野)
研究概要  本研究は、ザゼンソウの温度制御に関わるメカニズムの解明と発熱制御システムへの応用を目的として、平成13年10月から開始したプロジェクトである。これまで、フィールド調査に基づく遺伝子探索、計算機実験、および、分子生物学的実験といった異分野の研究手法を統合した研究が進展している。今年は、ザゼンソウ発熱システムが非線形ダイナミクスにより制御されていることを明らかにし、米国物理学会誌に発表した。また、ザゼンソウから抽出・再構成した制御アルゴリズムについては、工学部の長田 洋 助教授との共同研究により、プログラムのさらなるチューニングを行った。

◇農学部重点領域研究プロジェクト
担当者生体機能開発研究分野 伊藤 菊一、鳥巣 諒(農林環境科学科)、原 道宏(農林環境科学科)、広間 達夫(農林環境科学科)、橋本 良二(農林環境科学科)、山下 哲郎(農業生命科学科)
研究テーマ発熱植物をシーズとした新農学領域創生の試み
研究概要  本研究は、ザゼンソウ等の発熱植物研究をコアとして、岩手大学農学部としての特徴ある研究をより明確にするとともに、従来の専門分野にとらわれない新しい農学分野の創生を目的に企画されたものである。「農学」は、人類の営みそのものを保証する学問の一つと捉えることができるが、従来、その主な対象は、文明の発展とともに育まれてきた特定の生物種(農林作物・微生物等)の高度利活用を目指したものであり、地球上に繁栄する驚くべき多様性を有する生物種を考慮すると、これまでの農学としての学問体系はともすれば保守的であったとの見方も否定できない。他方、ザゼンソウ等の発熱現象は、高等植物の有するユニークな多様性の一つであると理解することができるが、これらの発熱植物は人類の営みとの接点がほとんどなかったため、従来、その農学としての位置づけは全くなされていなかったと言っても過言ではない。本プロジェクトにおいては、岩手大学農学部の特徴である農業工学、森林科学、生物化学といった幅広い視点から植物の発熱現象をより深く理解することを目指している。

◇21世紀COEプログラム
   熱−生命システム相関学創成:生物の寒冷応答機構をモデルとして
  本拠点は平成16年度採択のプログラムであり、熱という物理要素が生命システムの進化・維持という生命現象に関与する機構について、生物学的アプローチだけでなく工学的、生物情報学的アプローチを加え、既存の学問領域にはとらわれない切り口で解析し、得られた知見の領域統合型革新的応用を目指している。同時に、本研究分野における若手研究者育成を重点項目の一つに掲げ、大学院教育やポスドクの積極的な雇用を行っている。事業担当者は、寒冷バイオシステム研究センターの3名の職員(以下参照)を初めとする連合農学研究科と工学研究科所属の9名からなっており、その中に岩手生物工学研究所所属の研究者1名(連合農学研究科客員教授)が含まれている。寒冷バイオシステム研究センター所属の教員の担当分野は以下の通りである。

研究テーマ植物生存戦略(傷害回避)の分子機構
担当者上村 松生(生体機能開発研究分野)
研究概要  本研究は、植物細胞における寒冷環境下で発生する傷害の初発部位は細胞膜であることから、植物の寒冷適応機構や寒冷条件下での耐性獲得機構を理解するために、寒冷下における細胞膜の安定性獲得機構を調べることにしている。特に、低温馴化過程で変動する細胞膜タンパク質の機能と、細胞膜上に存在する信号伝達や遺伝子機能発現に影響を与えていると考えられている微小領域(ミクロドメイン、あるいは、ラフト)に焦点を当て、それらの低温適応分子機構への関与について解析を行っている。

研究テーマ植物発熱メカニズム解析
担当者:伊藤 菊一(生体機能開発研究分野)
研究概要  本研究は植物の発熱現象に着目し、その熱産生機構の分子基盤を明らかにしようとするものである。 本年度は、ザゼンソウの熱産生に関わるミトコンドリアに局在する新規の脱共役蛋白質(SfUCPb)の特徴付けに関わる研究を行い、同蛋白質がミトコンドリアの内膜に局在することを支持する結果を得た。今後、ザゼンソウの熱産生システムに関与する因子のより詳細な解析を進める予定である。

研究テーマ熱に対する生物の生存戦略メカニズム
担当者斎藤 靖史(細胞複製研究分野)
研究概要  越冬器官は、萌芽後ある程度成長したのち、成長を止め越冬に入る。リンドウ越冬芽で特異的に働くタンパク質、遺伝子を複数同定したところ、低温ストレスで発現が上昇するものが多く存在していた。これらのタンパク質は、低温にさらされる以前にその発現が上昇していることから、越冬芽は来るべき低温環境に備え、細胞分裂を停止し、低温、耐凍性を獲得していると考えられる。これらの機構を細胞分裂停止および耐冷、耐凍性と結びつけ、タンパク質間相互作用、情報伝達系を解明したい。さらに個々の遺伝子ハンティングだけではなく、分化時にみられるような染色体・核・クロマチン構造の変化、転写、複製、遺伝子発現抑制系の変化に注目した研究をも目指す。

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