ごあいさつ 

 2016年4月より「応用生物化学科・分子生物学研究室」として、新しいスタートを切ることとなりました。これまでの「寒冷バイオフロンティア研究センター・寒冷発育制御研究分野」としての研究に加え、より一般的な研究も視野に入れて研究を進めていきます。今後とも、主にモデル生物大腸菌を用いて生体膜の構造形成にこだわった研究を進めていきたいと考えています。研究に興味のある方はご一報ください。



What's new? 

●2017年6月 D1の沢里くんが第14回 21世紀大腸菌研究会で優秀ポスター発表賞を受賞しました。おめでとうございます。

●2017年4月 論文が Biochem. Biophys. Res. Commun. に掲載されました。

●2017年3月 M2の沢里くん、M1の西川さんが学長表彰を受賞しました。おめでとうございます。

●2016年6月 M2の沢里くん、M1の西川さんが第13回 21世紀大腸菌研究会で優秀口頭発表賞、優秀ポスター発表賞をそれぞれ受賞しました。おめでとうございます。

●2016年3月 M1の沢里くんが学長表彰を受賞しました。おめでとうございます。

●2015年7月 「大学新聞」にてM1の沢里くんの研究が掲載されました。

●2015年6月 M1の沢里くんが第12回 21世紀大腸菌研究会で優秀口頭発表賞を受賞しました。おめでとうございます。

●2015年6月 第16回酵素応用シンポジウム(天野エンザイム)で研究奨励賞を受賞しました。



研究概要 

 「DNA→RNA→タンパク質」というのは分子生物学のセントラルドグマと呼ばれるもので、遺伝子発現の流れを示すものです。しかし、このとき生成するのはアミノ酸が重合した「ポリペプチド」に過ぎません。実際に「タンパク質」として機能するためには、適切な修飾や高次構造の形成などのステップを経なければなりませんし、さらにはそのタンパク質が実際に機能する場所に輸送されなければなりません。つまり、適材適所に配置される必要があるのです。

 タンパク質は通常細胞質で生合成されますが、細胞の外や生体膜の中など、細胞質以外で機能するものもたくさんあります。こうしたタンパク質は膜を透過したり膜に組み込まれたりする必要があるわけです。生体膜(特に細胞質膜)は外界と自己の境目になっていて、膜を介した物質の横断は厳密に制御されています。たとえば、イオンや糖類などの低分子はおろか水分子さえ膜を自由に行き来することはできません。したがって、タンパク質がこうした生体膜を透過したり組み込まれたりするためには巧妙な仕組みが必要となってきます。

 下図は膜タンパク質が動植物細胞の小胞体膜や大腸菌の細胞質膜にどうやって組み込まれるかを大まかに示したものです。一連の反応に必要な因子の名前こそ若干違いますが、その基本的な反応の流れはどちらも驚くほど類似しています。こうした生物全般に保存された生命現象を、モデル生物大腸菌を用いて詳細で精密な研究により明らかにしていこうというのが我々の研究目的です。また、タンパク質膜透過反応や膜挿入反応は、古くから低温感受性であることが知られています。寒冷バイオフロンティア研究センターの大きな目標である「温度と生命現象」の関係を明らかにするために最も重要な研究テーマの一つであるといえます。

 我々は、タンパク質膜透過反応や膜挿入反応に必要な因子をすべて純化し、試験管内で再構成することに成功しました。さらには、膜挿入反応に必要な新奇糖脂質も同定しました。この糖脂質はタンパク質ではありませんが酵素様の機能を持つことから、MPIase(Membrane Protein Integrase)と名付けました。現在はMPIaseの構造と機能の関係について調べています。

 大腸菌における膜挿入反応と動植物における膜挿入反応がよく似ているということは、動植物においてもMPIaseに相当する物質が存在する可能性があります。また、植物の葉緑体では、大腸菌と同じようなタンパク質輸送が起きていることが知られています。真核生物、特に植物のMPIaseを同定することも考えています。植物のMPIaseの機能を改変する事により低温耐性植物の創出も可能になると期待されます。