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研究室・教員一覧
応用昆虫学研究室研究室ホームページ生産昆虫のカイコ、農業害虫のコナガ、森林害虫のコウモリガ、水棲昆虫のトビケラなどを研究対象として、染色体に刻まれた遺伝子情報を視覚化、昆虫の持つ潜在能力の発見することで害虫防除と昆虫利用を進める研究を行っています。 教授:佐原 健(さはら けん)研究内容昆虫染色体上にある遺伝子の位置関係を視覚化する技術を応用して進化を知り、害虫管理にゲノム情報を活用する研究を行っています。 担当科目応用昆虫学、昆虫バイオテクノロジー、生物制御学概論、生命資源科学演習I、生命資源科学演II メール:sahara(at)iwate-u.ac.jp 教員研究室の所在:2号館4階402号室 染色体マッピングを活用した昆虫の比較ゲノム解析 染色体は遺伝情報を担うDNAの進化の歴史が刻み込まれています。ガとチョウの仲間(鱗翅目昆虫)では、進化の歴史が刻まれる染色体を識別することが100以上もの長きにわたり不可能とされてきました。我々はこの困難を克服し、カイコ染色体の識別法を開発しました(カイコのBAC-FISHカリオタイピング:図1)。BACとは長いゲノムDNAがクローニングされた人工染色体のことで、FISH(Fluorescence in situ hybridization)とは視覚化技術のことです。 我々の開発した鱗翅目昆虫BAC-FISH法を応用すると染色体上での遺伝子マッピングが可能となります。これにより、カイコゲノム情報を基準としたゲノム比較を実現できることをこれまでに明らかにしました(BAC-FISHマッピングによるカイコとタバコスズメガのゲノム比較:図2)。その結果から、害虫を多く含むグループでは染色体間のリアレンジメントが非常に少ないことが予測され、カイコゲノム情報を基盤とした害虫遺伝子の単離が容易になると考えられます。また、我々はマッピングプローブとして長いゲノム断片領域を含むBACを使用しているため、多くの場合マッピング情報には遺伝子の制御領域も含まれると考えられます。これら情報を包括的に解析することにより、今後、環境負荷の少ない新たな農薬開発(ゲノム創農薬)を視野に入れた研究を行いたいと考えています。
講師:安 嬰(あん いん)研究内容昆虫のドラマチックな休眠メカニズムを解明し、バイオイノベーションに向けた昆虫機能の利用について研究しています。 担当科目分子昆虫学、応用昆虫学実験、人の暮らしと生物環境 メール:anying(at)iwate-u.ac.jp 教員研究室の所在:2号館4階403号室 天蚕麻痺性ペプチドによる蚕休眠卵の誘導機構と利用 応用昆虫学研究室では、ヤママユ(天蚕、Antheraea yamamai)の体液から天蚕麻痺性ペプチド(Antheraea yamamai-Paralytic Peptide, Any-ParP)を単離同定しました。これは、鱗翅目昆虫のENFペプチドファミリーに属し、天蚕のみならずカイコの幼虫に対して麻痺性行動を誘起します。そこで、Any-ParPの生理活性の解析とその利用のため、二化性カイコの非休眠卵産生蛹にAny-ParPを注射しました。その結果、Any-ParPは非休眠卵産生蛹から休眠卵を誘導し、まったく新しい生理活性を提案することができました。また、カイコの休眠ホルモン(DH)を合成し、Any-ParPの休眠誘導活性と比較検討した結果、濃度依存性ならびにステージ感受性から、まったく異なる一次構造を有するAny-ParPが、DHのミミクリー機能を有することを明らかにすることができました。さらに、この誘導活性を鱗翅目昆虫のENFペプチドファミリーに属する6種類のペプチドを用いて検討いたしました結果、Any-ParPの誘導活性が最も高いことを明らかにしました。 そこで、この新しい生理機能の機構解析のため、まずカイコ蛹におけるAny-ParPの標的器官を明らかにし、さらにAny-ParP依存性遺伝子とタンパク質の発現動態解析、ならびに単離同定と構造解析を行い、最終的にAny-ParPによるカイコ卵休眠誘導機構を明らかにします。 一方、Any-ParPが独自の麻痺性生物検定系で検出できることと、カイコ休眠ホルモン(DH)を模倣していることから、学術的には昆虫における休眠卵誘導の機構解析のために新たな知見が提供できます。また、DHと比べ未受精卵の誘発は認められず、高濃度のAny-ParPによる休眠誘導は、昆虫における休眠卵誘導剤の応用開発のためにも重要な可能性を提案しています。 現在は天蚕麻痺性ペプチドによる蚕休眠卵の誘導機構の解明と応用を目指し研究を行っています。
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