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研究室・教員一覧
獣医寄生虫学研究室当研究室では、ヒトや動物に感染する寄生虫とそれによる病気(寄生虫病)についての教育と研究を行っています。 教授:板垣 匡(いたがき ただし)研究内容動物に寄生する寄生虫の解明について研究しています。 担当科目獣医寄生虫学・寄生虫病学、人獣共通感染症学 メール:itagaki(at)iwate-u.ac.jp 教員研究室の所在:6号館4階408号室 寄生虫の分子系統学的解析 寄生虫を含む生物では、遺伝子の本体であるDNAが自己複製をして子孫に受け継がれていきます。突然変異もDNA塩基配列に刻み込まれるため、DNAを解析することでヒトや家畜に疾病を引き起こす寄生虫種の起源・進化・拡散の過程が明らかになると期待されます。 これまでに、日本や韓国でウシやヒツジ、ヒトなどに肝蛭症を引き起こす単為生殖型肝蛭(Fasciola sp.)が中国内陸部において両性生殖型のF. hepaticaとF. giganticaの種間交雑により誕生し、感染した家畜ウシの移動にともなって韓国に侵入し、さらに朝鮮ウシを介して紀元前2世紀以前に日本に侵入したことをミトコンドリアDNAの系統解析で明らかにしました。しかも日本国内には特定の遺伝子型を有した単為生殖型肝蛭だけが確認されることから、限られた遺伝子型の単為生殖型肝蛭が創始者効果を経て、日本国内に拡散したことを示唆しました。現在、アジアにおける単為生殖型肝蛭の分布と拡散を解明するため、アジア各国(タイ、ミャンマー、ベトナム、ラオス、ネパール、フィリピン、インドなど)の肝蛭虫体についてミトコンドリアDNAの解析を進めています。さらに、世界に広く分布するF. hepaticaとF. giganticaの起源と進化、拡散の過程についても、世界各国の虫体を用いて検討しています。さらに、これらのDNA塩基配列データを利用して寄生虫症を診断する技術の確立を目指し、研究を行っています。
助教 :関 まどか(せき まどか)研究内容様々な動物の寄生虫について、形態的および分子学的手法を用いて同定および系統解析を行っています。 担当科目寄生虫学実習 メール:madoka(at)iwate-u.ac.jp 教員研究室の所在:6号館4階407号室 単為生殖型肝蛭の減数分裂異常メカニズムに関する研究 肝蛭(Fasciola )属は主に反芻類の胆管に寄生する吸虫で、宿主の肝臓に著しい病害を与えるため、畜産業における経済被害は甚大です。世界的にはFasciola hepatica とF. giganticaの2種が良く知られています。一方、日本をはじめとするアジア各国には、単為生殖型肝蛭が分布しています。F. hepatica とF. gigantica は減数分裂を行い、受精により増殖するのに対して、単為生殖型肝蛭は減数分裂に異常があり、卵の単為発生により増殖すると考えられています。このような単為生殖型肝蛭は効率よく子孫を残すことができるため、伝播力が強く、世界中に分布を拡大しつつあります。しかしながら、単為生殖型肝蛭の減数分裂異常のメカニズムはほとんど解明されていません。当研究室ではそのメカニズム解明を目指して以下のような研究を行っています。
1. 肝蛭属の精巣の組織学的解析 減数分裂による精子形成過程の観察が容易な精巣に着目し、減数分裂が正常なF. hepatica およびF. gigantica と、単為生殖型肝蛭の精子形成過程を比較し減数分裂異常が起こるステージの同定を目指しています(図)。
2. 減数分裂異常メカニズムの解明 単為生殖型肝蛭はF. hepatica とF. gigantica の種間交雑により誕生したと考えられています。当研究室では両種を実験的に交雑し、子孫虫体を得ることに成功しました。さらに、それらの交雑子孫虫体では単為生殖型肝蛭と同様に精子形成能が低下したことを見出しました。このような交雑子孫虫体とF. hepatica およびF. gigantica、単為生殖型肝蛭を詳細に比較することにより、減数分裂異常のメカニズムを解明することを目指しています。
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