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生命適応機能研究分野研究室ホームページ寒冷環境で生育する植物が持つ環境ストレスによる傷害から回避する機構、および、低温などの劣悪環境に適応する分子機構を明らかにし、植物が持つ高い環境ストレス 耐性を獲得するための内生メカニズムを解析する。 教授:上村 松生(うえむら まつお)研究内容作物の生産性に大きな影響を与える寒冷環境に対する耐性のメカニズムを研究しています。 担当科目植物分子生理学、科学文献読解法、生物の化学概論 メール:uemura(at)iwate-u.ac.jp 教員研究室の所在:7号館2階02号室 植物の寒冷環境への適応分子機構とその応用低温は作物生産性に影響を与える最も重雲な環境因子です。地球規模の気候変動により世界各地で頻発する局地的「異常低温」による冷害・凍霜害による被害は、毎年膨大な額に上ります。その被害を軽減するため、個々の低温誘導遺伝子や低温誘導遺伝子群を一括して発現させる転写調節因子の導入による耐寒性(低温生育性、耐凍性、冷温耐性などを含む)増大が試みられています。しかし、耐寒性形質が非常に複雑であるため、遺伝子発現と傷害発生回避機構との因果関係が不明であり、耐寒性増大(あるいは付与)のための効率的アプローチを確立するに至っていません。 以上のような背景の元、私たちは植物の低温耐性分子機構を総合的に理解し、その知見を有用作物の耐寒性増大への分子育種法の確立へ役立てることを目的として仕事をしています。具体的には、(1)低温馴化初期過程で起こるシロイヌナズナ細胞膜の脂質・タンパク質変動とその分子機構の解析、(2)新規モデル植物(Brachypodium)を用いた低温適応機構の研究(寒冷バイオ・ラーマン先生との共同研究)、(3)細胞レベルでの低温受容と低温耐性の関係、(4)低温適応機構に対する光の影響、そして(5)凍結耐性の大きく異なる2種の穀物(ライムギとカラスムギ)を使った低温馴化過程で細胞膜に起こる変化の比較、などについて研究しています。 これらの研究を通して、低温適応に影響する要因を明らかにし、低温適応能力を増加させた作物を作り出す際に論理的で効率的なアプローチができるような情報を提供することを目指しています。将来、寒さに全く耐えられない作物が岩手の冬を越せるようになることも夢ではないかもしれません。
准教授:河村 幸男(かわむら ゆきお)研究内容低温植物生理学、特に、植物の凍結下における耐性および傷害のメカニズムに着目して研究を行っています。 担当科目物理化学概論、科学文献読解法、基礎生物学実験 メール:ykawa(at)iwate-u.ac.jp 教員研究室の所在:7号館3階305号室 植物の低温傷害とその耐性機構の解明 私たちの研究目的は、植物の低温傷害機構、もしくは低温耐性機構について、生理学的な理解を深めることにあります。低温、特に凍結下における植物の生理学的研究は100年以上もの長い歴史がありますが、近年の研究は、主に低温馴化過程における遺伝子発現やシグナル伝達の理解に重点が置かれていました。その中で、いくつもの非常に重要な発見がもたらされましたが、その一方で、これらの研究の基盤となる生理学的仮説に関しては、あまり大きく進歩しませんでした。この背景には、実際の低温・凍結下において、どの様な傷害が生じているか?、もしくは、どの様な機構で傷害を防いでいるか?、に関する研究を行うことに、非常に困難を伴い、また、その様なことを問う研究者も少なくなってしまったことにあります。 この様な中で、私たちは、実際の低温・凍結下において植物に何が生じているか?、について傷害もしくは耐性機構の観点から、また細胞・組織・植物体の3つのレベルから研究を行っています。特に最近は、凍結機械ストレスを中心に研究を進めています。凍結ストレスは、細胞に2つの質的に異なる物理ストレス、すなわち機械的ストレスと脱水ストレスを与えますが、これまでの研究は主に脱水ストレスに主眼が置かれ、機械ストレスに関する研究はほとんど行われていませんでした。現在までのところ、私たちは、凍結機械ストレスの影響とその耐性機構について、新規の知見を得ることに成功しました。 一方で、この新規発見には、光学顕微鏡による凍結下における細胞観察の技術向上が不可欠でした。凍結下における顕微鏡観察は、氷晶の屈折率が水と異なるため高解像度による観察は非常に困難を伴います。現在もまだ、以前より改善したとはいえ、高解像度による観察とはいえない状況です。今後も、詳細な凍結下における細胞生理学的知見を得るため、顕微鏡による観察技術の向上を図っていきたいと思っています。
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