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研究室・教員一覧
造園計画学・観光学研究室准教授:山本 清龍(やまもと きよたつ)研究内容担当科目メール:kiyo(at)iwate-u.ac.jp 教員研究室の所在:2号館4階414号室 自然公園の計画と管理および森林環境教育 大学の学部専門課程(3、4年)と修士課程では森林科学専攻の中の森林風致計画学研究室に在籍し、まず、日本人が好きな「松林の景観」の研究に取り組みました。しかし、勉強不足からか卒論のストーリーを組み立てる力が決定的に不足していたため、大学の近くのお風呂屋さん(=銭湯)に通いつつ研究室に泊まり込んであれこれ考え苦しんだのを覚えています。大学院に進学してからは、アイデアを整理し構想する場所として慣れ親しんだその銭湯をとりあげて「立地と空間構成」について明らかにしました。その後、大学でお仕事をさせていただくようになってからこれまで、大きく二つのことに取り組んできました。一つは「自然公園の計画と管理」に関する研究です。2001年から3年間にわたって尾瀬ヶ原をフィールドにして混雑感などの利用者の意識の構造を明らかにしました。また、2003年からは富士山や青木ヶ原樹海において満足感や環境配慮意識をテーマにした研究に取り組んできました。当初は、自然公園で起きている様々な問題にどのように優先順位を付けていくとよいのか、そのような問題意識から始めた研究ですが、混雑不快感や満足感の生起プロセスの解明、管理施策への反映方法、モニタリングに関する論点整理などまだまだ多くの課題が残されています。とくに、研究成果をどのように形(空間)に反映していくか、このあたりが造園計画の領域にいる研究者として探求すべき方向かなと思っています。 さて、もう一つのテーマは「森林環境教育」に関する研究です。国立公園や観光地の野外では多くの自然体験の機会が提供されていますが、単なるイベントに終わらせず具体的な効果を期待できるようにするためにはどのような工夫が必要なのか、そのような視点に立って研究に取り組んでいます。知れば知るほど自然の奥深さ、教育の難しさを実感する不思議なテーマですが、それだけにやりがいのあるテーマとも言えます。森林体験教室の参加者の意識の解明、ガイド同行ツアーと非同行ツアーにおける満足感の比較、教育プログラムの開発など徐々にですが研究成果を蓄積してきたと思っています。実践的には、小中学校等の地域の教育機関における森林教育プログラムの実施、ベネッセ・コーポレーションとの協働によるサイエンス体験キャンプ(2007-9年)の開催を通して、教育効果の解明や論としての森林環境教育の論点整理を行ってきました。以上がこれまで取り組んできたことですが、両者に共通することは「良質な自然体験を提供する」ための方法論の構築を目指しているということです。「自然(資源)をまもる」ということと同時に「その自然(資源)の魅力を伝える」ことが重要と考えています。さて、岩手大学着任前の3月11日に東日本大震災があり、赴任直後、多くの方に「大変な時に来ましたね。」と言葉をかけていただいてお気遣いを頂きました。たしかに、家の引越しがしばらくできず体力的にきつかったですが、それ以上に、私自身が関わる学問領域にとってもその意義や役割が問われる重大な局面だと認識しています。「自然をまもる」「地域の魅力ある資源を見せる」ことの重要性が、今はまだすんなりとは理解されない難しい状況かもしれません。しかし、震災復旧、震災からの復興の長い道のりの中でそうした取り組みが必要となるステージあると確信していますので、これからじっくりと時間をかけて地域と関わっていく中で具体的に復興のための案を出していかねばなりません。阪神淡路大震災の時にもコミュニティの崩壊が随分と問題視されましたが、初めて出会った人同士では花や緑、自然の話題が会話のきっかけとして用いられやすいという報告もあり、私が関わる造園計画、環境教育、観光だけでなく広く農学という分野に大きな期待が寄せられていると感じています。(写真1:尾瀬、写真2:富士山、写真3:世界最小公園)
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