岩手大学農学部は1902年わが国初の高等農林学校として創立した盛岡高等農林学校が出発点となっています。冷害で疲弊していた農民の生活を改善し、農業技術者の育成を目指して設立された全国でも有数の歴史のある学部です。
今日の社会を見ると、人類は自らのさまざまな活動によって生じた食料・生命・環境・エネルギー等に関わる諸問題に直面しています。農学は人間の営みに欠かすことができない「衣・食・住」すべてに関わっており、人類が対峙するこれらの諸課題に対応することのできる普遍的な学問分野です。
創立の理念に掲げられていたように、農学部では「実学」つまり社会の役に立つ学問を目指してきた伝統があります。その伝統は今も脈々と本学部に息づいており、現代の諸問題への対応および寒冷地農学をさらに推進するために、平成28年度に組織改編を行い、植物生命科学科、応用生物化学科、森林科学科、食料生産環境学科(農村地域デザイン学コース、食産業システム学コース、水産システム学コース)、動物科学科、共同獣医学科の6学科を設置し、教育研究の充実を図っていきます。その中には、本学開校以来初めての設置となる水産分野が含まれており、三陸沿岸を中心とした水産の教育研究を推進していく予定です。
一方、科学や学問は個人の好奇心から始まるのが常であり、それが本来の学問であり科学ですので、若い皆さんには、「それが何の役に立つの?」という質問をしないでもらいたいと思っています。今は実際の役に立たなくても、それが知らず知らずのうちに実を結んでくることは往々にしてあることなのです。
自分の興味をもった実学あるいは真理に向かって情熱をもって取り組み、学ぶことが大切です。農学部にはそうした気概・校風が根付いています。歴史あるこの学舎で、今も息づくその伝統を肌で感じながら学び、地域へそして世界へと羽ばたいていって欲しいと願っています。
2015.4.1
岩手大学 農学部長 高畑 義人 教授