先天性メトヘモグロビン血症

先天性メトヘモグロビン血症とは?

先天性メトヘモグロビン血症は主にポメラニアンで見出される生まれつきの病気です。原因はCYB5R3遺伝子の1塩基変異(194番目のコドンの配列がATCからCTCに変化)によりアミノ酸がロイシンからイソロイシンに変化することです。この変化によりNADH-メトヘモグロビン還元酵素(NADH-Cytochrome B5 Reductase)が異常を起こし、その活性が正常な犬の1/3程度に低下することで赤血球の中のメトヘモグロビンが増加します(Shino H. Otsuka-Yamasaki, Y. et al., J Vet Intern Med., 2017)。

赤血球という血液の中の赤い色の細胞は内部には鉄とタンパク質が結合したヘモグロビンという分子が大量に存在します。ヘモグロビン(デオキシヘモグロビン)は、肺で酸素を取り込み(オキシヘモグロビンに変化)全身の臓器に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。このヘモグロビンが過剰な酸化を受けるとメトヘモグロビンとなり酸素を運べなくなるため、チアノーゼと言って粘膜が紫色になります(図)。このメトヘモグロビンがさらに酸化するとハインツ小体というものができ、取り返しがつかなくなるため、メトヘモグロビンは通常、メトヘモグロビン還元酵素によってヘモグロビン(オキシヘモグロビン)に戻されますが、先天性メトヘモグロビン血症ではNADH-メトヘモグロビン還元酵素の活性が低いためこれがうまくいかず、チアノーゼを起こします。しかしながら、不思議なことにこの疾患の患犬たちはほとんど症状を示さず、飼い主さんも病気であることに気づかないことが多いようです。予後についてはまだわかっていないことが多いのですが、10歳を過ぎても元気な患犬がほとんどです。

2013年ごろ最初の症例が福島県郡山市の動物病院にて発見され、重度のチアノーゼがありましたが飼い主様は気づいておらず、緊急手術の必要がある病気になったため、手術を受け、無事に治療が成功しています。その子の解析を岩手大学農学部共同獣医学科小動物病態診断学研究室で行い2017年に論文として発表しました。岩手大学動物病院では、この知識と経験を生かし、先天性メトヘモグロビン血症の検査を有料で実施しています。

基本は遺伝子検査であり、遺伝子の塩基配列の解析を行い、塩基変異を検出します。その他希望があればメトヘモグロビン濃度やNADH-メトヘモグロビン還元酵素活性の測定なども行いますのでご相談ください。

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遺伝子検査について

先天性メトヘモグロビン血症 遺伝子検査費用:8,250円
生化学検査(メトヘモグロビン濃度など):相談してください

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お問い合わせ

岩手大学農学部共同獣医学科小動物病態診断学研究室・山ア真大
e-mail:masayama@iwate-u.ac.jp
※検査においては採血、血液の郵送などが必要なため、お問い合わせや検査依頼はかかりつけの獣医さんからいただけると助かります。

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先天性メトヘモグロビン血症

病気について