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研究室・教員一覧
産業動物臨床学研究室研究室ホームページ産業動物臨床学研究室では、岩手大学動物病院へ来院する患者様を手術を主体として治療を行っています。動物の場合には手術はもちろん、さまざまな検査で麻酔をして、医療行為を行います。したがって、外科教室のスタッフは常に緊張感を持ちながら、日々の動物病院の診察に一丸となって立ち向かっています。 准教授:高橋 正弘(たかはし まさひろ)研究内容牛のクローン技術、経腟採卵、胚移植など繁殖技術を中心に産業動物臨床に関わるテーマに取り組んでいます。 担当科目産業動物外科学、大動物臨床実習、総合参加型臨床実習 メール:takamasa(at)iwate-u.ac.jp 教員研究室の所在:農学部5号館3階303号室 牛の産業動物臨床に関して、臨床現場を通して内科外科を含め一通り勉強してきましたが、研究では特に牛の繁殖に興味がありフィールドワークとしております。家畜受精卵移植技術研究組合に所属し、体細胞クローン技術をはじめとした繁殖技術の実用化ならびに臨床応用を目的とした研究に取り組んでまいりました。今現在も繁殖技術に関連したテーマで進めておりますが、今後はさらに、脂肪酸分析や外科的繁殖学の研究にも取り組む予定です。以下、今までの研究内容の一部について述べたいと思います。
クローン技術の臨床応用を目的とした研究: 牛のクローン産子は過大子の発生率が高く、 そのため難産および死産の発生率が増加し、さらに出生後の生存率の低下がみられました。ホルスタイン種産子の中手幅・中足幅は生時体重と高い相関性が認められ、妊娠末期に超音波診断法により測定される胎子中手幅、その測定値から推定される胎子体重は、産子の中手幅および生時体重と近似していた。よって、妊娠末期の胎子中手幅の測定により生時体重が推定され、過大子が予測される場合には分娩誘起することにより、クローン産子の難産およびそれに起因する産子の損耗を最小限に防止できました。 また、ホルスタイン種体細胞クロ−ン雌牛の後代雌牛2頭の繁殖性や産乳性を調査したところ、後代牛2頭の初産時から2産次の平均乳量は9,037 kgと7,228 kgで対照牛の平均乳量の111.2%と88.9%でありました。体細胞クローン後代牛の乳量および乳成分および繁殖性に関して、特に異常が認められませんでした。
黒毛和種繁殖牛の過剰排卵反応および採取胚の受胎性におよぼすバイパス不飽和脂肪酸の効果: バイパス不飽和脂肪酸(トマリノール (日清丸紅飼料\x87\x8A))給与による過剰排卵処置成績は、試験区は対照区と比較して、回収卵数(3.5個/頭)および移植可能胚数(2.2個/頭)ともに有意に増加しました。胚の受胎性は新鮮胚、凍結胚とも試験区(66.7%、57.1%)では対照区(51.1%、44.0%)と比べて有意に高いことが認められました。
黒毛和種牛における卵胞液中脂肪酸濃度と胚の体外発生能ならびに耐凍性との関連: 牛の卵胞液中には種々の脂肪酸が含まれており、それらは牛胚の発生や耐凍性に大きく関わっているのではないかと考えました。そこで、卵胞液中の脂肪酸濃度と牛胚の体外発生能ならびに耐凍性との関係を調査しました。と場由来黒毛和種牛の卵巣から個体毎に卵胞液と卵子を採取し、未成熟卵子を成熟培養、体外受精、発生培養を行い、分割率ならびに胚盤胞発生率を調べました。拡張胚盤胞はクライオトップ法によりガラス化保存し、融解胚の生存率を調べました。また卵胞液はガスクロマトグラフィーを用いて卵胞液中の脂肪酸組成を分析しました。その結果、牛卵胞液中の脂肪酸組成と分割率、胚盤胞発生率ならびにガラス化保存胚の生存性は、ある種の脂肪酸と相関性が認められています。
牛血中脂肪酸組成ならびに経腟採卵(OPU)による胚の体外発生能に及ぼすバイパス不飽和脂肪酸給与の影響: 牛にバイパス不飽和脂肪酸を給与することで、卵胞発育、卵子品質、胚の体外発生能など様々な繁殖機能に影響を及ぼすことが知られています。そのバイパス不飽和脂肪酸は繁殖成績の向上や過剰排卵処置での採胚数の増加が報告されています。しかし、バイパス不飽和脂肪酸給与が、牛血中脂肪酸組成ならびに経腟採卵による卵子の体外発生能に及ぼす影響は明らかになっていないため、バイパス不飽和脂肪酸が血漿中の脂肪酸組成ならびにOPU由来卵子の品質ならびに胚の体外発生能に及ぼす影響を検討しました。バイパス不飽和脂肪酸を14〜28日間給与することにより、血中脂肪酸組成は給与した脂肪酸が反映され、またバイパス不飽和脂肪酸の長期給与によりOPU由来胚の分割率を向上させる可能性が考えられました。
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